超魔術という新たなマジックの分野を確立した父親と、家庭ではほとんど接点がなく育った娘。埋まらない溝に悩むマリックと親の七光ではなく“自分”を見つけるために奔走したLUNA。そんな父娘がお互いを認め、同じステージに立つ日を迎えるまでのストーリーとは―。
中学校から呼び出されて「退学です」
「ハンドパワー」で一世を風靡し、日本のマジック界で確固たる地位を築いたMr.マリック。長女のLUNAは、ミュージシャンとして日本のR&Bシーンで活躍中だ。数年前にテレビ番組で共演を果たした父娘は、壮絶だった親子関係を語り話題となった。
ともすれば「グレた娘と、それを立ち直らせた父親」といった美談に仕立て上げられてしまいそうだが、そんな単純な話ではない。寄り添ったり、離れたり、第三者に相談したり。あらゆることを試していまの親子の形にたどり着いた。そんな75歳と43歳の父娘が腹を割って話す、今までと、これから─。
マリック LUNAが中学生のころはとにかくすごかった。家には帰ってこないし補導はされるし、ものすごいヤマンバメイクで、もうとんでもないやんちゃな子でしたから。
LUNA えへへへ(笑)。
マリック そんなことが続いたある日、突然中学校から呼び出されて「退学です」って告げられたんです。私立だから校則も結構厳しかったしね。でも「話し合いもなくいきなりそれはないでしょう」ってもめたりもしましたね。
LUNA お父さんがテレビで有名になり始めたのは、私が小学校3年生くらいのころ。学校では「すごいね!」って騒がれたり、いじられたりもしたけど、私、気が強いほうだから(笑)。全然嫌じゃないし、それほど気にならなかったんです。ただ、その状態が数年続いて中学生になったとき、もういいかげん“マリックの娘”としてじゃなくて、私自身を見てほしいという思いがだんだん強くなってきたんですよ。