約30年で100以上の選挙を統括し、国会にも豊富な人脈を持つ選挙プランナーの永田太郎が政治の深層を語ります。
永田町の風景が一変、初登院や第2次石破茂内閣の発足どころではなくなりました。総選挙直後に行われる特別国会11月11日、8時前の国会正門前。初登院を待つフレッシュな顔ぶれや後援者らは、これから議員バッジがつく喜びに満ちており、その話題は出なかったのです。
朝6時に配信された国民民主党・玉木雄一郎代表の高松市観光大使・小泉みゆきとの不倫報道です。
それが急遽8時17分に会見の予告が出され、9時30分に衆院会館で謝罪会見となります。そこから「玉木は終わったか」「今後どうなるのか」「来月の税制調査会が103万円の壁のヤマなのに」という空気が広がっていきました。
13時から衆院本会議を前にし、沈痛な面持ちの国民民主党の両院議員総会。首班指名の直前とあっては、躍進の象徴である玉木代表にどうするもこうするもできず続投を了承します。
本会議場は、30年ぶりの決戦投票を目の前に、傍聴席も大盛況。しかし、最も注目された男は石破茂総理でも立憲民主党の野田佳彦代表でもなかったのです。この男、玉木がどんな顔をして現れるのか。
聴衆の間にも怖いもの見たさが見え隠れしていました。
私も眼下の渦中の人を凝視していましたが、脂汗がにじむ中でも歯を食いしばって立ち切ったように見受けられ、総選挙で躍進した政党代表としての矜持は、辛うじて保たれていたようです。
そして臆せず19時から有楽町駅前で直接、国民に街頭演説で謝罪し「一定のみそぎ」を済ませた格好となりました。
フジテレビ系は、FNNで議場退出直後の玉木代表に政策実現への意気込みをとうとうと語らせ、関西テレビでは橋下徹氏が新たな政策形成プロセスを作ってとエールを送りました。
国民民主党は中堅政党に格上げされたばかり、玉木代表以外に一般国民に知られた議員がいません。ここを持ちこたえないと、党の存亡に関わる危機になります。
肝心の国民世論ですが「私事である不倫よりも、公の政策で手取りを増やせる期待感が勝る」と怒りは盛り上がらず、初動の反応には安堵していたことでしょう。
SNSなどを見ても、「不倫うんぬんより政治家としての働きぶりが大事だ」という声も多いようです。
そしてお家の一大事とばかり、翌日12日10時30分から再度の会見で「火消し」に全力を挙げる結束力を見せます。