さだ「いやぁ2年半、待たせちゃったね(笑い)」
大沢「2年半、待たせていただきました(笑い)」
歌の世界を小説にする作業は大変だったとさだが振り返りながら、ふたりの対談がスタート。
さだ「この曲、モデルになった柴田先生に話を聞いてから完成まで15年かかっているんですよ。でも、歌も小説もいろいろな偶然があって何かに書かせてもらった、と感じるんだよね。歌は書き始めたら30分でできたし(笑い)」
大沢「びっくりしたのが、僕の演じる航一郎が"ミスター大丈夫"と呼ばれていることでしたね。僕、口ぐせが"大丈夫、大丈夫"なんですよ。さださんに話した覚えがないのに、どうして? って」
さだ「僕、小説を書くと主人公は知っている人をモデルにするんですよ。そのほうが細かいディテールを描写できるから。もちろん、今回は大沢くんをモデルにして書いたんですけど、その"大丈夫"というのはまったく知らなかった。そういう偶然がほかにもあって、書かせてもらっているという感覚になりましたね」
初めは小説化は無理だと思っていたというさだ。しかし、編集者の"大沢さんが待っていますよ"の囁きに背中を押され……。
さだ「じゃあ、ウソでもいいから書いてみようかと思ったんですよ」
大沢「ウソなんだ(笑い)。でも、第1稿をいただいたときは仕事(『神秘の北極圏』/NHK・2013年)で北極に行く直前だったんですけど、とにかく読みたくて」
さだ「自宅でプリントアウトして持っていったんだけど、厚かったよね」
大沢「厚かったですね。でも、本当に素晴らしくて。編集の方に"涙が出ていますと伝えてください。では、北極に行くところなので失礼します"って(笑い)」
このふたりの出会いは、さだの『解夏』の映画化で大沢が主演したこと(2004年)。
さだ「『解夏』は大沢くんが引き受けてくれたのがうれしくて。その後も『眉山』(2007年)も出てくれて。でも、あのころからだよね、『風に立つライオン』の話をするようになったのは」
大沢「そうですね。僕はもともとさださんの曲を聴いていたし、小説にも映画という形で参加させてもらって。そのうちさださん本人ともお会いする機会があって……。そうやって時間を使いながらここまできた感じですね」
作品でタッグを組んでいるふたり、それぞれどんなイメージを持っている?
さだ「なさねばならないことに対して、惜しむことをしない人、ですね。俳優として、男としてこういう人が僕は大好き。大沢くんが楽しみに待っていたから、今回の小説も早く書かなくては、という気持ちになりました。それでも2年かかっちゃったけど」
大沢「小説にしても曲にしても、さださんの宇宙の中にある"何か"に救われ、助けられている人が僕を含め日本全国にいるってすごいことじゃないですか。そういうものを生み出し続けることは僕にはできないことで、そこが尊敬できるんです。そういう人の作品に自分が携われるのは最高にラッキーだし、感謝しています。だから、自分の持っているものを最大限出したいと思うんです」