
「私が演じるジョーンは、絶対的な自信を持っている成功者。だからこそ娘にも自分と同じようになってほしいという願いが強いのだと思います。私には娘がいないので、自分と母との関係を思い浮かべながら参考にしています」
オフ・ブロードウェイ発の話題作、舞台『リンス・リピート ―そして、再び繰り返す―』が日本で初上演される。娘・レイチェル(吉柳咲良)の摂食障害をきっかけに浮き彫りになる家族のすれ違いや苦悩を描いた作品だ。
仕事と家庭のはざまで葛藤する母親・ジョーンを演じるのは、寺島しのぶ。母から娘に受け継がれる愛と痛みの物語に挑戦する。
「ジョーンの過度な期待をしすぎてしまうところは、ダメなところだと思います。ですが、私も目標に向かってできることはとにかくやるタイプなので、“まだ足りない”“まだ行ける”という上昇気質なところは共感できます」
映像や舞台など幅広く活躍し、女優として確かなキャリアを築いたのは、その前向きな気質の賜物(たまもの)ともいえる。
「20代のころはとにかく有名になりたかったです。文学座に入ってからは、舞台の基礎を身につけるために勉強をしました。やがて、外部からもお話が来るようになったり賞をいただけるようになりました。
また、映画キャリアの原点『赤目四十八瀧心中未遂』では、“この役がやりたいです”と自分で手紙を書いて役をゲット。やりたいことを実現するために邁進してきた実感はあります」
息子はもう中学生、あっという間に大人に―
実生活では、母として子育てに奮闘する寺島。4月から中学生になった息子の尾上眞秀(まほろ)は、歌舞伎役者の道を歩み始めた。
「“頑張れ!”とは思いますが、言い方は気をつけるようにしています。母親なので彼がどこまでできるかわかるので、全力を出し切っていない時は“もっとできるじゃん!”という気持ちになります。
彼ももう中学生になるし、歌舞伎の世界は周りに大人がいっぱいいるので言い訳も一丁前で(笑)
言い合いになった時は、距離を置くようにしています。“次に会う時は何事もなかったかのように会おうね”というのが私たちの間での約束事です」
