連日のように報道されるいじめによる事件や自殺。もしわが子がいじめを受けた場合、どうすればいいのだろうか?
ひとり娘をいじめによる自殺で失ったことをきっかけにNPO法人『ジェントルハートプロジェクト』を立ち上げ、600校の教師と23万人の生徒に講演経験のある小森美登里さんにその対策法を聞いた。
Q・加害者への正しい対応の仕方とは?
「加害者の背景を踏まえたうえで、対応してあげてください。“どうしたの?”“何かあったの?”という声かけからスタートしましょう。本当は大人に声をかけてほしいんです。気にかけてもらえていると思うことで、いじめの行為自体は止められなくてもエスカレートすることを防げるかもしれない」
小森さんたちのワークショップでは“今まで見たこと・聞いたことのあるいじめ”を書いてもらう。心へのいじめと肉体へのいじめに分けさせると、子どもたちは自分でしっかり分類することができるのだという。
「加害者の子も自覚しているんだと実感しました。だから、間違っても“何やっているんだ”“自分がされたら嫌だろう”なんて言わないこと。やってはいけないことだと百も承知でやっているのですから、そこを怒っても効果はありません」
Q・傍観者はいじめの加害者? 被害者?
「先生がクラスにいじめがあることを知るきっかけでいちばん多いのが、実は加害者でも被害者でもない、第三者であるクラスの子どもからの報告。子どもたちは教室の中で何が起こっているのか、嫌でもわかってしまうものです。被害者を助ければ、今度は自分がターゲットにされてしまうかもしれない。そんな不安を抱えて過ごしている傍観者も、いじめの被害者だと思っています」
苦しんでいる友達を助けられない苦しみは、自分を責めることにもつながってしまう。もしわが子にクラスでいじめがあることを告白されたら、親は何をしてあげればよいのだろうか。
「“そうなんだ、見ているのはつらいでしょう”と寄り添ってあげてください。そして、何かできることはないか一緒に探してあげてください。もし、ほかにもいじめを知っている子がいれば、その子の親と連携がとれるかもしれない。先生に報告できるかもしれない。上手に関われる方法を、親子で考えてあげてください」
Q・子どものケンカに親は出て行くべき?
「いじめという問題をすごく軽んじている大人が多いのではないでしょうか。例えば、同じ暴力でも家庭内で起こったら“虐待”。ところがまったく同じ行為が教室で行われたら“いじめ”になる。いじめくらいで、という認識から変えないといけません。虐待くらいで、なんて思わないですよね?」
被害者にとっては毎日が生き地獄。様子を見ている時間はない。命に関わる問題と知るべきなのだ。
「保護者もぜひ参加してくださいと呼びかけている講演でも、来てくださる方はごくわずか。いじめを受けてから動くのでは遅いのに、自分の子どもが当事者にならないとわかろうとしないんでしょうね。親は、子どもが学校に入学したら、その現場と共存する覚悟を持つことが大切です。普段から子どもの様子を気をつけて見ることはもちろん、先生と連絡を取り合ったり、親同士で積極的に情報を交換してください」