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 1997年の神戸連続児童殺傷事件の犯人・酒鬼薔薇聖斗(32)が10日、事件の詳細や医療少年院を仮退院した後の生活・心情などを元少年Aとして綴った手記『絶歌』(太田出版、294ページ)を刊行し、波紋を広げている。

 元少年Aは’12 年冬に溶接工を辞めてから、この約2年半は短期バイトで食いつないできたとしている。手記は初版10万部。著者印税が10%とすると、1500万円が懐に入る計算になる。

 結局はお金目当てではないのか。元少年Aという匿名を隠れ蓑に、犯罪行為を赤裸々に告白し、金儲けすることに違和感を覚える読者もいるだろう。

「彼自身が“自分はご遺族に払わなくてはいけない賠償金を一生背負っている。印税はそのお金にも充てたい”と話しています。全額かどうかはわかりません。こちらから、ご遺族の方に渡しませんかと言ったことはないし、これくらいの金額は賠償に充ててほしいと言ったこともありません」(担当編集の落合氏)

 都内の複数の大型書店を調べたところ、発売初日だけで入荷の5~7割程度売れるなど出足は好調。しかし、中には「遺族感情に配慮して当店では取り扱っていません」という店舗もあった。

 じつは今年1月ごろから、酒鬼薔薇手記が出版されるという噂があった。土師くんの父・守さんは出版が強行されるとは知らず、

「以前から、彼がメディアに(手記を)出すようなことはしてほしくないと伝えていましたが、私たちの思いは完全に無視されてしまいました。結局、文字だけの謝罪であり、遺族に悪いことをしたという気持ちがないことが今回の件でよく理解できました」

 出版社に対しても「極めて配慮を欠き悪質」と抗議文を送り、手記の回収を求めている。

 前出の落合氏は、「事後報告になってしまったのは本当に申し訳ないと思っています」として次のように話す。

「しかし、これは出版すべき本と弊社は考えています。これからでもご遺族の理解を得られるような努力をしていきたい。少年犯罪において、加害者が自分の言葉でどういった理由で事件を起こし、あるいはこのまま生きていていいのかを含め活字にしたものはありません。世間を揺るがす少年犯罪が多発する中、いろいろな方に読んでいただきたい。彼(元少年A)は更生しているのか、いないのか。何を考えて犯罪をおかしたのか。考える素材にしてほしい」

 衝動を抑えきれずに執筆した点は病的ともいえる。矯正教育のかいなく、病気がぶり返したのではないか。しかし、製本までのやりとりの中では、元少年Aは聡明で「そうしたことはいっさい感じなかった」(落合氏)という。

 手記では、祖母の仏前で電気按摩器を使って初射精したことを告白。ガンジーやチェ・ゲバラを「ド変態」呼ばわりし、麻原彰晃やダウンタウンの松本人志らに影響を受けたことも明かしている。