「役員選びは抽選なのですが、個人的な都合がある方については事前に保護者会会長と相談をすることができます。1回役員をやれば10年はやらなくていい、妊婦や新1年生の保護者は選ばれないなどかなり考慮されていますね」
そして現在の状況について、
「学校が関与せず、自分たちで創設し、必要に応じて形を変えてきた団体ですから、活動が難しいなどの問題があれば、みなさんで話し合って状況に沿った形に変えていくのが望ましいのだと思います。現に広報委員もなく広報紙もありません。会議で決まったことは紙1枚にまとめ、保護者に配られます」(高橋校長)
時代に適応した柔軟な変化が必要
負担を減らす努力が見える一方、マナーに関する文書を作成し保護者に配布するなど、子どものためになることは積極的に行っているという。
“子どものために”これが本来あるべき姿だが、“子どものためにやるべきだ”という周囲の同調圧力が、選ばれたら役をやらなければならない雰囲気を作りだしている面も。本誌のアンケートでは、そんな声も数多く寄せられた。
名古屋市内のある小学校のPTAでは、PTA会長が自ら改革に乗り出した。
2児の父で、会長に就いて今年で3年目になる。過去に選挙で役員に選ばれた人が、やりたくないと主張したことから、改革を決めたという。
「選挙で委員に選ばれたら絶対やってくださいというシステムこそPTAがいちばん嫌がられている原因なのだろうと思い、実際にアンケートをとったところ、やはりPTAは必要だと思うけれど、役員や委員はやりたくないという傾向が顕著に表れたのです」
とPTA会長。
役員・地区委員・学級委員と役職があるが、負担を減らすには各クラスから必ず2名選出される学級委員を廃止することに決めた。
「結局なにかをするときに動員されるのは学級委員なんです。学級委員で構成される専門部などの仕事もみんなでシェアすれば負担が減ると考えました」(PTA会長)
会長はアンケートの結果に基づき保護者との話し合いの場を設け提案。承認され、今年度から新体制での運営が開始されている。
「広報紙づくり、家庭教育に関するセミナーの企画、運動会の受付や片づけなど自分ができる範囲でできるときに役割を選択していただく形にしました。会議の回数も減らし現時点では問題なく運営されています。またアンケートでPTAの参加にとても積極的な人がいることもわかり、積極的な方の中から役員をお願いする形をとることにしました。来年度の会長もすでに決まっています」(PTA会長)
さまざまな議論があるPTA問題だが、PTAに参加する保護者に共通しているのは“子どものため”という思いではないだろうか。一部の人間が不利益をこうむり、それがひいては子どもに悲しい思いをさせることだけは避けなければならない。
“子どものために”組織も個人も、時代に適応した柔軟な変化が必要だ。