子どもたち自身に気づいてもらう
私たちの調査では、子どもたちは勉強中にLINEや動画、音楽やゲームなど、スマホで複数のアプリを利用している「ながら勉強」をしていることもわかりました。
「動画を見ながら勉強ができるの!?」とびっくりされる方も多いと思いますが、現代の子どもたちの「マルチタスク」(複数の処理を同時に行うこと)の巧みさには驚かされるばかりです。
しかし、当然ながら複数アプリを使いながらの勉強は、成績を大きく落としてしまうことにつながっています。
私たちが、勉強中に使用したアプリの数によって、4教科の平均点がどうなるかを分析したところ、アプリの数が多いほど成績は下がる、ということが明らかになったのです。
子どもたちは勉強どころか、アプリさえひとつのことに集中できていないのです。「何にも集中できていない」というのは、脳の発達において最も悪影がである、とも言えます。
子どもにスマホとの関係を考えさせる
さて、ここまでの調査結果をみて皆さんはどう感じられたでしょうか。
私がこの解析結果を見たときの第一声は「うわっ!! こわっ!!」です。こんな恐ろしいデータを見たことはありませんでした。
今すぐスマホを子どもからとりあげますか? 今やスマホは社会の「必要悪」になっています。学校のお友達、部活の連絡、すべてメールやLINEが主流であるというのは、よく聞く話です。そんな社会的な情勢の中「スマホ禁止」と頭ごなしに言っても、子どもは反発するだけです。
では、どうすればいいのか?
私が子どもたちに向けて講演会をするときには、まずはこれまでにお話したような科学的なデメリットを伝えます。そのうえで、スマホを使うメリットと比べて「どう使えばいいか? を自分たちで考えてください」と話しています。
すると、子どもたちはたいてい「友達とコミュニケーションが取れる」と言います。
ところが「スマホなしで友達といい関係はできないですか?」「スマホでつながっている友達と、スマホなしでつきあっている友達との関係性に違いはありますか?」という質問を投げかけると、子どもたちは自分で「スマホと友達付き合いとは関係なさそうだ……」と気づいていきます。
こうして機会をつくってあげれば、子どもたちは自分自身でスマホとの正しい付き合い方を考えるわけです。
ぜひ、ご家庭でもこうした機会をつくってください。
そして、おやごさん自身も、子どもたちと一緒にいるときには、スマホを遠ざけてください。ご自身がスマホ中毒にならないお手本を示してあげることが、子どもたちが正しい道を選ぶ力を育むことにつながるはずです。
川島隆太(かわしま・りゅうた)◎東北大学加齢医学研究所所長 スマート・エイジング国際共同研究センター長。東北大学大学院医学研究科修了、スウェーデン王国カロリンスカ研究所、東北大学加齢医学研究所助手、講師、教授を経て、2014年より同研究所所長。任天堂DSゲームソフト『脳を鍛える大人のDSトレーニング』、学習療法を応用した『川島隆太教授の脳を鍛える大人の音読ドリル』シリーズ(くもん出版)などで一躍、時の人に。人の脳活動の仕組みを研究する「脳機能イメージング」のパイオニアであり、脳機能開発研究の国内第一人者。研究で得た知見を産学連携に応用、その実績から総務大臣表彰、文部科学大臣表彰。『脳が活性化する大人のおもしろ算数脳ドリル』(学研プラス)など著書多数。