家宅捜索で階段を行き来する捜査員

「その朝、パトカー1台と覆面パトカー2台が駆けつけました」と地元住民は振り返る。

 横浜市神奈川区の自宅マンションに遺体を放置したとして、神奈川県警は山内真里子(60)、長女・桂(34)、次女・優香(29)=いずれも無職=の3容疑者死体遺棄容疑で15日に現行犯逮捕した。マンション管理会社から「異臭がする」と警察に連絡があったのがきっかけだった。

 県警によると、遺体の身元は21日、真里子容疑者の夫で姉妹の父親である浩さん(63=無職)と判明。2DKの居室内、5・5畳の洋室で一部白骨化しており、死後約1~2か月経過していた。死因はわからない。一家に何があったのか。半年以上前に金銭絡みの騒動があった。

「昨年10月、真里子容疑者が“夫(娘の父親)が退職金を分配しない”と110番通報した。警察が駆けつけると、娘2人が父親を羽交い締めにして同容疑者が暴力を加えていたらしい」(全国紙記者)

 労働収入がない母娘3人が生活苦に耐え切れず、退職金をひとりで使おうとした父親を責め立てたような家庭内の対立構図が思い浮かぶ。それでも常識的に考えて、成人男性が女性に組み伏せられるのは想像しにくい。女3人対男1人ではそんなに分が悪かったのか。

 父親はこの約半年の間に神奈川区役所を計12回訪問していたという。

 同区役所は「たしかに相談を受けました」と認めたうえで次のように話す。

「ただし、奥さんと娘さんたちの生活上の問題や健康面を心配する相談です。状況を把握するため自宅訪問を何度か提案しましたが、“それは結構です”と拒否されました」

 と高齢・障害支援課。

 つまり、退職金を渡すことをケチる相談ではなく、妻や娘の生活・健康を心配していたというのだ。

 近隣住民らの話によると、一家が引っ越してきたのは約3年前。母娘3人は毎晩のようにキャリーバッグをゴロゴロと引きずって近所を徘徊する姿が目撃されている。

「娘さんはガリガリにやせていた。本当にガリッガリ。手足が細く、胸も小さくて女性を感じさせない身体つきでした。3人とも身長150センチ台前半程度と小柄で、近寄りがたい独特の空気感を放っていました」(商店主の男性)

 別の目撃者によると、少なくとも1年前から深夜のファミリーレストランに入り浸り、母親は「消去! 消去!」と叫んでいた。会話の内容から殺人をにおわすニュアンスで、娘はただただうなずいていたという。

 深夜営業する飲み屋街周辺では有名人だった。

「歩きながら誰かの文句をずっと言っているらしい。怖いねって噂になっていたんですよ」と飲食店オーナーは話す。

 奇妙な真夜中の徘徊から1人欠けることはあっても、父親が加わることはなかった。

「家出しちゃえばよかったのに……」と話す住民もいる。

 母娘3人は容疑について「何のことかわかりません」(真里子容疑者)などと話しているという。