120歳まで生きないと時間が足りない
若宮さんにシニア向けの新しいアプリは作らないのか聞くと、アイデアは10も20もあるという。シニアの知恵や日本の伝統を後世に伝えるようなアプリを考案中だ。
忙しい合間を縫って、ほぼ毎日Facebookに記事を投稿しており、アップルのWWDCの様子も写真つきで紹介している。またFacebookではこの2年間、「エイティーズの冒険」と題して、シニアが自立するための提案を連載している。近いうちに完成させて電子書籍にしたいそうだ。
「“リケジョ”ならぬ、“リケロウ”こそ必要なんです。老人がパソコンやスマホが苦手なのは、理科がわからないから。文部科学省に言っても100年たっても実現しないでしょうから、まずバーチャルな老人小学校を作って、理科を教えたいと考えています。
今のスマホは音声入力できるから、たとえ寝たきりになっても使えるし、エンディング間近な人同士が交流できるバーチャルターミナルケアみたいなものも、もっとあってもいいと思います」
次々と構想を語りだすと止まらない。
「あとはね、死ぬまでに1度でいいからテレビドラマが作りたいんです。ああ、でもこれは無理かしら」
「若宮さんをモデルにしたドラマができたりして」
思わず口にすると、すかさず答える。
「だったら脚本を書くとか。プログラミングも、もっと勉強したいし。とにかく、やりたいことがありすぎちゃう」
そして、真剣な面持ちでこう訴えた。
「計算するとね、120歳くらいまで生きないと時間が足りないのよ!」
◎取材・文/萩原絹代
はぎわら・きぬよ 大学卒業後、週刊誌の記者を経て、フリーのライターになる。’90年に渡米してニューヨークのビジュアルアート大学を卒業。’95年に帰国後は社会問題、教育、育児などをテーマに、週刊誌や月刊誌に寄稿。著書に『死ぬまで一人』がある。