大阪府泉佐野市。JR日根野駅から車で約10分の緑豊かな田園地帯で事件は起こった。
8月17日朝、「妻が亡くなっている」と119番通報。
救急隊員が駆けつけたところ、自宅の居間で小林治子さん(48)が倒れており、その場で死亡を確認。治子さんの全身には無数のあざがあった。
逮捕されたのは夫の無職・小林清容疑者(50)。逮捕容疑は16日深夜から17日未明の間、治子さんの頭部などを木刀で殴って殺害した疑い。小林容疑者は「死ぬとは思っていなかった」と殺意を否認しているという。
「子どもに事情を聞いたところ、16日の午後11時ごろ両親がケンカする声が聞こえ、翌朝7時ごろ“母親が息をしていない”と父親に起こされたと話しています」(捜査関係者)
容疑者は、日常的に妻に暴力を振るっていたのか。
同捜査関係者は、
「治子さんからDVに関する相談はありませんでした。トラブルの原因は捜査中です」
一家は3人暮らしで中学生の息子がいる。ごく普通の家庭に見えたが、取材する中で、治子さんが歩んできた幸うすい人生が浮かび上がってきた。
小学校の同級生が明かす。
「人懐っこくて誰にでも話しかける明るい子やった。ただ軽い障がいがあったんか、授業についていけず、特別学級に行っとった。離婚してお袋さんと2人住まいでな。生活も苦しかったんちゃうか」
そんな治子さんも中学校を卒業し、タオルを製造する企業に就職。5〜6年働いた後に地元の旅館へと職を変えた。
旅館の経営者は、
「目がクリッとして可愛らしい顔で恰幅のいい子やったわ。力仕事もできるやろうって雇ったんやけど、“お金貸して”とほかの従業員をつけまわすんや。仕事にならんからクビにしたんやけど、1か月もおらんかったと思うで。その後は風俗で働いてるって話、聞いたけどな」
どの仕事も長続きせず母親は病気で入院。徐々に追い詰められていったのか、近隣に「お金を貸してほしい」と訪れたこともあったという。
やがて治子さんは結婚し、3人の子に恵まれたが離婚。そして3人目の夫が小林容疑者だったという。
「4年ぐらい前に表札の名字が変わっていてな。ハルちゃんが結婚したって言うんや。だから、旦那さんどんな人なんって聞くと“暴力団やねん”って。ただ2人とも働いてなかったはずやから、生活保護を受けてたんちゃうかな」(近隣の女性)
事件の1か月前、小林容疑者を知る元暴力団員の男性は自宅を訪ねたという。
「“酒飲めんから茶しかないけどな”って言ってたんやけど、酒に酔ったみたいにろれつが回ってなくて、以前とは別人やったよ。シャブ(覚せい剤)のやりすぎで後遺症でも残ったんちゃうかな」
上の2人の子どもはすでに家を離れている。同居していた息子の登校をいつも見送っていたという治子さんを近所の男の子はよく覚えていた。
「登校のとき、家の前を通るといつも“おはよう”って挨拶してくれて、好きやってん」
関係機関に一時保護されている少年は、母を失ったいま何を思うのだろうか。