「同一労働同一賃金」でパートや派遣の給料も社員並みに?
非正規雇用が働く人の4割にのぼり、女性に限れば6割を占める状況のなか、待望される『同一労働同一賃金』。同じ仕事ならば、正規・非正規にかかわらず同じ給料・待遇であるべきとの考えに基づくこの制度は、「働き方改革」の柱とも言われている。
ところが、肝心の中身はというと、格差解消の期待に応えるものからはほど遠い。竹信さんが指摘する。
「正社員に出ている交通費が非正規にも出るとか、一部にいいところはあるものの、肝心の賃金が問題。それがまったく是正されないしくみになっています」
法案では、できる仕事内容に応じて給料や待遇が決まる『職能給』や、成果に応じて給料が支払われる『成果給』の場合、正社員と同じ仕事内容だったり、成果を上げていたりするのに賃金が極端に安ければ、それを見直さなければならないとしている。
勤続年数に伴い給料が増える『年功賃金』の場合も同様だ。
このどれもが、非正規にとって現実的ではない。
「非正社員が職能給で評価されることはほとんどない。たいていが時間給です。成果給でもありません。年功賃金といったって、契約期間の定められた短期雇用が基本だから、正社員と年功が同じになるわけがない。しかも、それを会社が嫌だと思えば、契約の更新をやめてしまえばいいだけ。こんな同一労働同一賃金で格差が解消されるとは、とても思えません」
また、このような基準を適用したところで「実際は上司の胸先三寸というのはよくある話」と竹信さん。
「もともと日本の正社員の賃金評価は主観的で、かなり恣意的です。会社に盾つくと減らされちゃう。だから、みんな従順になるわけですね。今回の制度は、そうした評価方法を非正規に広げただけ。仮に非正規への偏見を持っている上司の下で働いていたら、うだつが上がらないままです。もし安く働かせたいと思っている方針の会社だったら、非正規だけに難しい試験をやらせて、落としてしまうでしょう」
このような制度は「同一労働同一賃金ではなく、同一労働同一義務」と竹信さんは手厳しく批判する。
一方、欧米では、スキル・責任・労働環境・負担度の4項目で仕事を分析、それぞれ点数化して、正社員・非正規の間で比較するILO(国際労働機関)の評価方式を採用している。
「例えば、正社員はエクセルが使えないが、非正規はできるためスキルの点数は非正規が上。それなのに、賃金で大差がついている場合は、是正しなければなりません」
具体的な仕事内容を数値化して比較するため、上司の主観が忍び込むのを防げるというわけだ。
格差解消が求められるなか、公正という視点の欠けた、名ばかりの制度を作られても意味がない。