欽ちゃんの教えを胸にがんと向き合った

 小西さんは、末期がんで死の現実を突きつけられたとき、がんを克服して『徹子の部屋』に出演する自分をイメージしていたという。本書から伝わってくるのは、そんな前向きな姿勢とポジティブな思考の大切さだ。

「僕のベースにあるのは、芸能界の師でもある萩本欽一さんの教えなんです。欽ちゃんが常々、口にしていたのが“人生50対50”という言葉でした。どんな人にも幸せは起こり、同じように不幸せも訪れます。人生はその繰り返しだよと言われ、たしかにそのとおりだと思いました。実は僕、がんの告知から手術の日まで、毎晩、お風呂の中でわんわん泣いていたんです。早々に病気を受け入れたからこそ、素直に泣くことができ、結果的に気持ちがすごく楽になりました」

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 小西さんは、体調に異常を覚えてかかりつけの医師の診察を受け、その紹介で東京慈恵会医科大学附属病院泌尿器科の穎川晋先生と出会う。本書に記されている小西さんと穎川医師のエピソードは、まさにヒューマンドラマのよう。

「末期の腎臓がんだと告げられた僕に、穎川先生は“俺にまかせろ”と言いました。そこまで言ってくれた先生ですから、素直にまかせようと思いましたし、実際、穎川先生のことは全面的に信頼していました。手術後は3か月ごとに定期検査を受けていたのですが、完治がわかったとき、穎川先生は泣きました。後から聞いたところによると、手術後の5年間、“今度こそ転移が見つかって、もうだめかもしれない”と思いながら検査に携わっていたそうです」

 小西さんは、穎川医師から聞いたという患者と医師の良好な付き合い方を教えてくれた。

セカンドオピニオン、サードオピニオンを受けるよりももっと大切なことは、かかりつけのお医者さんといい仲になっておくこと。お医者さんと心が通う関係になっていれば、万が一、深刻な病気が見つかったときに“小西くんのためなら、〇〇病院の〇〇先生を紹介してあげよう”となる。病気を克服するためには、それがいちばん、大切なことなんだそうです。僕はあまり健康診断を受けていなかったので末期がんになってしまったので、みなさんには年に1度は健康診断を受けてもらいたいと思っているんです」

 小西さんは末期病棟に入院中に、高校生が死んでいく姿を見た。その光景が今でも忘れられないという。

僕は今、生きていることに感謝しながら、気楽に楽しく暮らせれば、それに勝る幸せはないという気持ちで毎日を過ごしています。子ども向けの講演会では、“生きてるだけで150点!”、大人が対象のときには“生きてるだけでいいんです”と伝えています。この本を通して、僕の言葉がひとりでも多くの人の生きる支えになってくれればいいなぁと心から思っています」

取材・文/熊谷あづさ

<著者プロフィール>
こにし・ひろゆき 1959年、和歌山県生まれ。中京大学商学部卒業。卒業時に教員免許状を取得。在学中、中京テレビのローカル番組への出演で芸能界デビュー。1982年、バラエティー番組『欽ちゃんの週刊欽曜日』のレギュラーに抜擢され、“コニタン”の愛称で人気者に。音楽番組『ザ・ベストテン』の2代目司会者を務めるほか、数多くの映画やドラマに出演するなど多方面で活躍。