「相続でモメる場合、遺産額は2億、3億といった高額ではなく、5000万円以下の金額でモメることが多い傾向にあります。金額が多いかどうかは関係ないんです。
モメる理由は、不動産などが“分けにくい”というのがほとんどですね。現金などはきっぱり分けられるのですが、家や土地などはそんなふうにはいかない」
そう解説してくれたのは、相続コーディネート実務士の曽根恵子さん。相談案件は圧倒的に実のきょうだい同士のトラブルが多いという。
「かつて仲がよかったきょうだいでも、数十年前の恨みや不満を相続の話し合いの場で爆発させるといいます。具体的なお金も絡み、感情的になりがちなんですね。特に姉妹である場合、話がなかなかまとまらずに長期化して悲惨な事態になることがあります。介護の役割分担に不満をもっていたり、実家住まいのきょうだいが財産を隠してしまっていたりすると、折り合いがつけづらいですから」
また、きょうだい間で『家長制度』への認識に差がある場合もトラブルにつながりやすい。
「長男と妹というケースでは家長制度を主張する長男がひとり占めし、嫁に行った妹たちに相続放棄をさせる、なんてこともよくあります。嫁に行った場合でも、相続人は相続人ですから、主張してくるのは当然なんですけどね」
こんなケースもある。不動産(自宅、アパート、貸家)と預金・証券を残して父親が亡くなった。相続人は、母親と長女、長男の3人。長男は不動産全部を相続したいと主張し、母親は自宅敷地を相続したいと言い、長女は自宅とアパートを母と共有したい、とそれぞれの主張が食い違った。遺言書がなかったこともあり、調停にもつれこみ、いまだ解決に至っていない。
「トラブルになっても調停になれば解決する、と思っている方が多いのですが、それは大きな間違い。調停では法的な財産の分け方以外、話し合われません。当然、介護してきた人の心情を酌み取ってくれたりすることはありませんし、そういう事情を親身に聞きだしてくれたりするわけでもない。だから、かえって泥沼にもなりやすい。そのため私たちは、なんとか話し合いで決めましょうとおすすめしています」