遺言書を残す際の注意点は?

 トラブル回避には遺言書を残すことが必須。ただ、書き方には注意が必要だ。

自筆の遺言の場合、曖昧な表現のせいで無効になってしまうケースが少なくありません。そのため、証人を専門家に依頼する公正証書遺言をおすすめしています。遺言書を作るときは、こっそり作らないのが原則。できるだけ公平にして付言事項の欄に、子どもたちの名前を必ず入れ、感謝の気持ちなどを書き添えるといいでしょう。遺産の分配についても、付言事項に理由を明記しておけばトラブルにはなりにくい」

 遺言書を作るのは女性が多く、年代では70代が最多。平均寿命の長い女性の場合、遺言が実施されるのは10年以上、先になる。

私たちは『民事信託』をおすすめしています。これは不動産などの財産を多く持ち、節税の必要のある方や、賃貸物件を所有されている方には最適な制度。財産を管理するだけの『成年後見人制度』と違い、存命中でも売却・処分ができるうえに、買い替えたり、管理の実務を親に代わって子どもが行えるメリットがあります。書類づくりに費用はかかりますが、親が安心して家族に財産を託すことができますよ」

 実際、それなりに不動産を所有していても、手持ちの現金が少なくなると、老人ホームの費用などの心配が出てくる。さらに、認知症になってしまったら売却もできない。

「『民事信託』なら、例えば母の生活費に使うなど、子どもが親のために活用することもできます。また父親は老人ホームで、母は家でひとり暮らしという場合、母親も将来、老人ホームに入って実家が空き家となったら、処分して子どもたちの老後の費用に充てるということも可能です」

 本来、きょうだいは譲り合うつもりでも、小さなすれ違いからトラブルになるケースが多いと曽根さん。

「財産を隠されたり、勝手に使われたり、また主張を一方的に押しつけられたりすると、モメる原因になります。まず、きょうだい間でコミュニケーションをよくとり財産をオープンにしておくこと。そのためには親の説得が必要です。老後のサポートのためにも、親を説得し、家族会議をしておけばいいでしょうね」

 リアルトラブル3つのケースに陥らないように、しっかり対策をとろう!

<まとめ>
きょうだいが争わないために親ができること
(1)家族みんなで生前対策を
(2)普段からコミュニケーションをとっておく
(3)財産や生前贈与はオープンにしておく
(4)寄与や介護の役割分担の情報を共有する
(5)公正証書遺言や民事信託を用意する

<プロフィール>
曽根恵子さん
株式会社『夢相続』代表取締役。『相続に困ったら最初に読む本』『相続・贈与の本』など著書40冊以上。テレビ出演多数