──船の中で何をなさっているんですか?

ライブのリハーサルをしていたんだよ。ここはいくらでも大きな音を出せるからな。ピアノがあるから作曲もできるしね。あとは休養だ。

 本を読んだりしている。ここにいると心が休まるよ。都会で生活していると、ストレスがたまるだろ。そうすると朝に晴ればれと目覚めることがなくなる。ここは緑がいっぱいでマイナスイオンが出ているから気持ちがいいんだよ

 確かに80歳とは思えないほど元気で、肌ツヤもいい。船の上で暮らし始めたというウワサは本当なのだろうか。

「ここはオレにとって家みたいなもの。若いころは忙しくて年に2回ぐらいしか乗れなかったけど、今はやっと船上生活もできるようになった。これまで一生懸命、働いてきたんだからいいだろ?」

──なぜこんな立派な船なのに、沖に行かないんですか?

ひと晩ここで寝てみればわかるけど、風が吹いても動かないだろ。入り江をいろいろ調べたけど、ここが世界一!

 都会を離れて海上で暮らすことが、今の彼のライフスタイルということなのだろう。

 設計中だというエコシップについても聞いてみた。

「エコシップは風力と太陽光の発電だけで動くから、燃料はいらない。海水を浄化して真水も作れるし、冷蔵庫に食料を蓄えておけるから災害救助船として使える。今はスピード化、軽量化のために設計をやり直しているんだよ」

 その昔、加山は「幸せだなァ」と歌っていたことがあったが、今も幸せなのだろうか。

人間は幸せのために生きているんだ。それが自分のためだけじゃなくて、大勢のため人のために尽くすということが喜びになってくる。それがいちばん大切なこと。おっ、最後にいいこと言ったな。忘れるんじゃないぞ!(笑)

 弾けるような笑顔は、昔と変わらない。船を降りると、ライブの練習をしている歌声が響いてきた。若大将は今も青春まっただ中だ!