’12年12月に誕生した第2次安倍内閣。その成果を経済面から見てみると、アベノミクスによって好景気をもたらした反面、庶民の実質賃金は低下、生活は悪化する事態に。ここでは、そんなアベノミクスを振り返るとともに、気になる消費税の行方についても検証していきます。

好景気、人手不足なのに庶民の給料が上がらないワケ

 株価は依然として高値をキープ。就職率は上がり人手不足が目立つほど雇用環境は改善されたのに、なぜか厳しい庶民のフトコロ。安倍首相が「道なかば」と訴えるアベノミクスは、5年近くたっても私たちに恩恵をもたらしていない。

 経済アナリストの森永卓郎さんが解説する。

アベノミクスは『金融緩和』『財政出動』『成長戦略』が3本の矢として放たれた結果、金融緩和が最大の効果を上げました。民主党政権末期と比べれば一目瞭然ですが、日経平均株価は2倍半に上がり、1ドル79円という超円高だったのが110円台ぐらいまで戻り、景気動向指数も全体としては上昇傾向。景気はよくなり、経済のパイも増えました

 ところが、安倍政権下の5年弱の間に、実質賃金は3%も下がっている。

パイが大きくなり、経済全体としてはすごくよくなっているのに、庶民の生活はむしろ悪化している。庶民の取り分は小さくなってしまった。ならば、成長の成果はどこへ行ったのか? 答えは、企業の内部留保。’17年まで5年連続の増加、つまり安倍政権になってから、企業はとてつもない儲けを貯め込み続けているんです」(森永さん)

 今年3月末に厚労省が発表した法人企業統計によれば、企業の内部留保は406兆円で過去最高に。

「そのうち211兆円が現預金、つまりキャッシュ。企業の役員報酬は利益に連動するようになっていて、いちばん儲けのネタになっているのは『ストックオプション』。新株引き受け権といって、株価が上がるとその差額がフトコロに入ってくるんです。金を貯め込むと、企業の価値は上がりますから株価も上がってもうかる仕組みです」

 株式の譲渡益や配当、不動産の譲渡益で収入を得ている富裕層に恩恵は集中。

「不動産価格もアベノミクスで上がりました。結局、大企業と富裕層が成長の成果をごっそりもっていったというのが、アベノミクスの末に起こったこと」

 こうして格差は拡大していく。金融広報中央委員会の『家計の金融行動に関する世論調査』(’16年)によれば、預貯金をいっさい持たない「貯金ゼロ世帯」は2人以上の世帯で30.9%、単身世帯では48.1%に達している。

「これを解決するにはひとつしかない。企業と富裕層から税金をとって、庶民にばらまくことです」

 一方で自民党は、消費税の10%増税分の使い道を見直し、幼児教育などに充てると公約に掲げている。消費税は所得が少ない人ほど負担が増す「逆進性」があると言われており、食料品などの生活必需品の税率を低く抑える軽減税率も、まだ導入されていない。

消費税は霞ヶ関の役人はみんな上げたがっています。なかでも財務省は絶対に上げたい。希望の党をはじめ凍結や中止を公約にしている政党もありますが、相当に強い力で財務省を抑え込めるか、疑問が残ります」

消費税をめぐる安倍首相の発言
消費税8%への引き上げにあたり、「消費税収は社会保障にしか使わない」(’13年10月)
消費税10%への引き上げ延期、衆院解散の際、「再び延期することはないと断言する」(’14年11月)
「リーマン・ショックや大震災のような事態が発生しない限り実施する」(’16年3月)
消費税10%への引き上げを’19年10月に再延期すると表明、「これまでの約束とは異なる新しい判断だ」(’16年6月)
消費税10%の増収分の使い道を変更、幼児教育無償化に回す方針を打ち出す一方で、「リーマン・ショック級の大きな影響、経済的な緊縮状況が起これば(再々延期を)判断しなければならない」(’17年9月)