運営するためには問題のある人材でも受け入れざるをえない
介護保険がスタートしたのは’00年4月。民間活力を促進するために始まったが、介護職員の給与は低く抑えられている。
「介護報酬は3年ごとに改定されますが、立て続けに下がりました。給与はほかの産業と乖離があります」(染川事務局長、以下同)
賃金構造基本統計調査では、全産業の賃金の平均は30万4000円。一方、介護職員は約22万円(NCCU調査)と、格差がある。
厚労省は4月、介護職員の給料を月額1万2000円ほど増やすため、1.14%を引き上げた。しかし、介護保険の財源確保として、’15年に2.27%引き下げていたため焼け石に水だ。
安倍総理は解散時の演説で「わが国の社会保障制度を全世代型へと大きく転換する」と述べていたが、染川事務局長は「効率化ばかり目立つ」と批判的だ。
「介護人材にかかる需要推計」では、’25年度には253万人の介護職員が必要。これに対し、供給できる見込みは215.2万人で、37.7万人が不足すると考えられている。しかし、不足した労働力を補うための有効な手立てがなく、「人材の不足分は大幅に増加するのではないでしょうか」
それを象徴する数字がある。日本介護福祉士養成施設協会の統計では、’16年度の定員枠は約1万6700人(373校、4月現在)だったが、入学者数は約7700人。定員の50%を下回ったのは2度目で、学校数もピーク時の430校から減っている。
「政府の対策は小手先で、学費を補助したり、報酬を少し上げたりしたくらい。勤続年数が長くても給料が増えません」
その結果、離職率は上がり人手不足は常態化する。
「運営するためには問題のある人材でも受け入れざるをえない。就職後に教育訓練する余裕もありません」