報告書で、担任に叱責され自殺したA君を目撃した生徒は「言い方がひどかった」「(聞いている者が)身震いするくらい怒っていた」などと証言しているが、校長の認識は若干、違う。

「担任の先生が大声で怒鳴っているのは見たことがあります」と認めつつも、

「A君が担任にひどく叱られている場面を見た記憶はないんです」とすっきりしない回答。副担任の叱責についても

「副担任の叱責が強いとは僕は思ってないです。(強くないと)僕は思っているんです。僕の主観です」と、かばう。

校長にも家庭にも過呼吸の報告はなし

 客観より主観が優先してしまう教育現場のトップに、事態が悪化しないように食い止める力は、むろん期待できず、最悪の事態を招いてしまった。

 救えるチャンスは、何度となくあったが、それは見逃された。もしくは、あまり重視されなかった。

 A君は、池田小学校6年当時、同小で家庭科の講師をしていた副担任にミシンがけで残され帰宅バスに間に合わなかった過去があり、中学に赴任してきた当時、家族に副担任は嫌だと伝えていた。

 副担任が理由で男子生徒は「学校に行きたくない」と登校を渋ったことがある。昨年5月のことだった。その理由は「宿題未提出の理由を言い訳だとして聞いてくれない」というもの。

 急きょ家庭訪問した担任に母親は副担任の交代を求めたが、担任は「代えることはできない。副担任と2人にならないようにしっかり見ていきます」と約束したが、口約束はすぐに破られる。その証拠に、副担任が男子生徒を別室に呼び出すことに、許可を与えている。

 宿題の提出をめぐっては、「やらなくていい」と言った副担任に「やらせてください」と男子生徒が土下座しようとしたこと、過呼吸だと副担任にビニール袋を求めて、副担任がビニール袋を渡し背中をさすったことがあった。過呼吸に関しては、命を絶つ前日の出来事だ。

 このような異変が校長に報告されることはなく、生徒の重大な体調問題でもある過呼吸について、家庭に連絡されることもなかったという。