約40分間、通話を続けた田中さんは、警察へと引き継いだ後、病院へと向かった。
「2人が“お父さんとお母さんがいなくなっちゃった”と僕のところに泣きながら駆け寄ってきたんです。でも、かける言葉もなくて……」
そして、「これは事故じゃない」と田中さんは声に力を込める。
「ふたりは殺されたんですよ。ちゃんと殺人罪で起訴をしてもらいたい。娘の卒業式も成人式も結婚式も孫の顔を見ることもできないんです」
嘉久さんの母・文子さんの家は、一家のすぐ近く。嘉久さんの家に駐車場がないため、仕事から遅くに帰宅する嘉久さんは実家の駐車場に車を止めていた。文子さんはその音を聞き、安心して眠りにつく日々だったというが、
「布団に入ると強く思い出します。全然眠れなくなってしまってね。あんなに優しかった子が、なぜ私のそばからいなくなってしまったんだろう。今も死んでしまったって認めたくないんです」
と悲しみに暮れたまま。幸せな家族を壊した石橋容疑者は、テレビの取材に対し、向こうに後ろからあおられたなどと答えていたことに憤る。
死刑は望まない、なぜならーー
「ウソばっかり話して、全然反省していないです。世の中にいなくていい。ずっと刑務所に入っていてほしいです」
しかし過失運転致死傷では懲役7年以下か罰金100万円以下。ふたりの命を奪ったにしては、あまりに軽い。長女と次女は事故の翌日から友香さんの父母と生活をしている。友香さんの父が、2人の孫の様子を明かしてくれた。
「学校に送りだして、帰ってきたら勉強をする。ごく普通に生活をしています。ただ、嘉久さんや友香だったら弁当を渡すとき、勉強を見るときになんて声をかけていたのかといつも考えます」
そして、法律のことはよくわからないですけどと断り、「やっぱり重い刑にしてくれればと思います。死刑は望まない。すぐ楽になっちゃうから。ずっと苦しんで、苦しみ抜いてほしい」
友香さんは、静岡大学の事務員として働いていた。同僚の女性はその人柄について、
「太陽のような人でね、いつも笑顔で、友香さんがいるとその場がパッと明るくなるような人でした」