相手の属性、つまり学年や性別や地区を最初は聞いていたが、個人を特定されることを恐れたのか、やりとりが中断することもあったという。絵文字は誤解をされる可能性があるためなるべく使わない、スタンプも同様。試験運用ということでLINEの相談から電話につなげることはせずチャットの相談だけに限定した。電話と違い、返事をする際、相談員同士で相談してから返事ができるというメリットもあったという。

 問題点、反省点もあった。

高校生の95%がLINEを利用

「ひとりの相談に1時間以上かかり、待ちが多くなってしまい、相談できずに終わってしまうケースがありました。相談を受ける側のタイピングのスピードアップや、LINEのやりとりで相談の核心を引き出す方法など研究する余地はあるかなと思います」

 2011年に中2いじめ自殺を防げなかった滋賀県大津市も、11月1日から来年3月31日まで、中学生を対象にしたLINEによるいじめ相談を試験導入する。

 LINE側の提案に、「SNSということではなく、できるだけ相談の間口を広げる、ハードルを下げるといいますか。そういう相談環境を作れたらなと常々考えていた」と、大津市教育委員会いじめ対策推進室の担当者は打ち明ける。そのうえで、

「中高生が使うSNSの中でいちばん使用されていたのがLINEだった」という理由もあって、LINEとの連携を整えた。あくまでも試行のため、対象中学は、

「北部、中部、南部で1校ずつ、3校を予定しています。市内全域の、約3割にあたります。210万円くらいの補正予算をいただきました。業務を専門的な機関にお願いしますので、その委託料になります」(前出・担当者)

 LINE株式会社は、メールで次のような見解を寄せた。

「当社が行ったアンケートによると、高校生の95%がLINEを利用している、という結果が出ており、子どもたちが日常的に接している環境で相談できることで、いじめ相談のハードルを下げることができるのではないかと思います。

 あくまでも、既存相談窓口を補完するものと考えており、相談の幅を増やすもので、既存の相談窓口に置き換えるものではないと考えております。他のSNSよりもプライベートなコミュニケーションツールとして使われることの多いLINEは、安心感もあるのではないかと思います」