【自殺願望のある人を殺した場合、罪が軽くなるって本当?】
「2005年、大阪府堺市で、人材派遣会社に勤務する36歳(当時)の男が、自殺サイトに書き込みをした14~25歳の男女3人を殺害する事件がありましたが、殺人罪が適用されました。男が、殺人目的で自殺サイトを物色し、自己欲求を満たすために犯行に及んでいたからです」
と話すのは、ジャーナリストの渋井哲也氏。
「自殺願望者の中には、探偵のサイトや便利屋のサイトにアクセスして“私を殺してください”と依頼し、実際に事件化した例もあります。常識的には考えられませんが、“なんでもやります”という宣伝文句をはき違え、頼んだということでしょう」
白石容疑者は現状、9人全員の殺害を認め、嘱託殺人の主張はしていないが、供述はいつ翻すかわからない。前出・事件記者が解説する。
「自殺を手伝った場合は自殺幇助罪。殺害を依頼され犯行に及んだ場合は嘱託殺人罪。量刑はいずれも、6か月以上7年以下の懲役または禁錮刑で、死刑または無期懲役もしくは5年以上の懲役の殺人罪の量刑より軽くなる」
【容疑者はごく普通の青年だった。誰でもやれることなのか?】
「今回の事件は、本当にレアケース。このような犯罪をする人間は、1億人の中に1人いたって珍しい。それくらいのレベルなのです。
殺人の動機として最も多いのが怨恨に基づくものですが今回の被害者は会ったばかりの他人。ということは殺すことが強い快感であったか、遺体に興味があったか。この2つの仮説が支持されます」
そう分析するのは、犯罪心理学者で東京未来大学こども心理学部長の出口保行教授。
「9人も殺し、遺体の一部を部屋に残していることから、よほど遺体に強い執着、興味があったのでしょう。解体している最中も自分が相手を支配しているという強い快感があったのだと推測できます。
そして女性ばかりを狙ったのは、単純に襲いやすかったから。相手を殺害できなければ意味がないわけですから、絶対的弱者を狙ったということです」
【小さいころの経験と事件を結びつけるものはあるのか?】
「殺人事件の報道で“小さいときにカエルを殺していた”などと出ることがありますが、これらが直接殺人に結びつくことはありません。殺意というのは徐々に形成されていくものではなく、何らかのきっかけで殺人に興味を持つことがある。ただ、そのきっかけは本当に千差万別です」
と前出・出口教授。ひとつの引き金として“支配感”というキーワードをあげる。
「誰にでも支配感はありますが、何かしらのきっかけで、人を殺すことで強い自身の支配感を満たし、快感を得られるのかもしれないと興味を持ったのではないか」