矛盾する教頭の話
本誌が同高校の高橋雅彦教頭に取材すると、「学校では染髪や脱色については禁止していますが、本来の色を否定して黒くしろというルールは示していません。本来の色で生活してほしいと考えています」と言い切る。それどころか、
「地毛が茶色い、赤っぽい生徒もいます。みんな真っ黒だったらそれは明らかに染めさせているじゃないですか」
なぜA子さんに対し、何度も指導を強要したのか質問すると、「係争中のため答えられない」と回答を拒んだ。
学校側の仕打ちにA子さんが我慢の限界に達したのは今年の6月のことだ。
3年生になったA子さんが学校を訪ねると、生徒名簿にあるはずの自分の名前がない。それどころか、4月に聞いていた出席番号には別の生徒の名前。教室には席もなかった。
学校側の言い分は、
「名前や席がないのは不登校を目立たせなくするため。変な噂が広まらないように」
そんな理屈が通るのか。代理人弁護士は憤る。
「学校は、司法の判断にまかせるが、裁判に負けない限り謝罪はしないと話しています」
校則に詳しい、千葉・浦安市立小学校の塩崎義明教諭は、「今回の事件は子どもの自由や権利をないがしろにした行為」と指摘。学校に子どもを守る大人がいなくなってしまった、と話す。
「最近の教師は子どもたち同様、決まりに縛られて何も言えないのが現状です。生徒の髪を黒く染める指導に疑問を挟む余地がないのは、教師自身も規則に縛られているということの表れです」(塩崎教諭)
A子さんは心に深い傷と大人への不信感を持ったまま。『ルール』を重視するあまり教師は大切なものを見失ってしまったのではないだろうか。文化祭も修学旅行も、友達との時間も……。かけがえのない時間は裁判が終わっても戻ってこない。