フィフィ:私自身、喋るのが自分の売りだと思っても、テレビだとすぐに発言をカットされてしまう。でも、ツイッターや週刊誌メディアだと、テレビで無理なことも喋れるから良いのよね。事務所はヒヤヒヤしていると思いますけど。
だけど同時に、事務所やテレビを作る側も、視聴者をヒヤヒヤさせないとダメだというのをわかり始めています。だから『バイキング』はうまくいったと思うんですよね。ヒヤヒヤしていますよ。ですよね?
佐藤:たしかに出演しながらすごくヒヤヒヤしていますね(笑い)。
フィフィ:メンバーも変わりながらやっているんですけど、みんな本音で喋っていますよね。だからウェブメディアだったとしても、イメージを優先させて本音をいえなかったら、うまくいかないんじゃないかと思う。
変わってくる芸能事務所の勢力図
ーーウェブメディアの台頭によって、いままで成り立っていたパワーバランスがこれからの5〜10年で変わるとなったとき、新たにできあがるパワーバランスはどのようなものだとお考えですか?
佐藤:今後はインターネットメディア側に流れていくタレントさんも増えていくでしょうね。そして、そうしたタレントさんを管理できるところが力を持ち始めると思います。
フィフィ:UUUM(ウーム※注4)とかもですよね。
佐藤:ええ、インターネットに特化した芸能事務所が増えてくると思います。大手事務所さんも、徐々に変わり始めているところではありますけどね。
フィフィ:本当は芸能界って芸がないとダメなのに、これまでのパワーバランスのなかでは、コネだったり、枕だったりで出ている人が多かったわけです。本当の実力で番組に出ていなかった。
なんだか「空っぽ」の芸能界で生きてきたような感じがするんですよね。
いまの時代の需要に応えていくためには、ユーチューブをはじめとする細分化するメディアに対応する必要がある。それは決してテレビに敵対しているということではなく、そうした世間の需要に応えていないテレビが置き去りにされているだけ。新たな需要に対応するためには、どうしていけば良いのか、それを考えるべきですよ。
佐藤:そういう意味でも良い刺激になるんじゃないでしょうか。適切な競争環境ができてくるかと。同時にそれが、海外に対峙できる力にもなってくると思うので。海外は競争が重要なので、必死で演技の勉強や外国語を学ぼうとするタレントさんたちも出てくると思います。
フィフィ:すでに起こってきている変化としては、文化人の枠も増えましたね。佐藤先生のように、弁護士さんの出演も増えていますよね。
佐藤:番組もコンプライアンスがあるので、法律的な話は弁護士に話させようと考えています。でも、弁護士が出演して、責任がある立場から、わかりやすく視聴者に伝えることは、すごく大事なことだと思います。
フィフィ:専門家を集めた事務所がさらに増えていくような気もします。
佐藤:実際、医者だけを集めている芸能事務所もあります。そのうち弁護士専門の芸能事務所というのも出てくるでしょうね。
フィフィ:芸能事務所にしても、いろんな人を抱えるのはリスクですからね。専門の方ばかりを集めた方が扱いやすいのかもしれません。
逆にタレントさんにしても、自分に合った芸能事務所に入る方が良いでしょうね。私の場合でいえば、これまでサンミュージックのお笑い班にいたんですが、いまは文化人枠に移動したんですよ。
それは、ほかのタレントさんでも一緒で、ユーチューバーとしてのウケがよければ、そちらに特化した事務所さんに入ったほうが良いわけで。
佐藤:いずれは芸能事務所の細分化・専門化が起きるんでしょうね。
フィフィ:いくら大きい事務所に入っていても、仕事が入ってこなければ意味がないわけですから(笑い)。才能をわかって行動してくれる事務所さんの方が良いと思いますね。
※ 注1 昨年11月、女優・柴咲コウさんがEC事業、メディア事業、音楽事業を展開する新会社「レトロワグラース株式会社」を設立、代表取締役社長CEOに就任。 ※ 注2 今年9月、俳優・山田孝之さんがライブコマース事業を手がける新会社「ミーアンドスターズ株式会社」を設立、取締役CIOに就任。 ※ 注3 11月3〜5日にかけてAbemaTVで行われた、元SMAPの稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんによる72時間生放送番組「稲垣・草なぎ・香取3人でインターネットはじめます『72時間ホンネテレビ』」は7400万超の視聴数を記録。 ※ 注4 ユーチューバーの育成・管理に特化したタレント事務所のこと。
<構成・文/岸沙織>