親世帯の自立が祖父母の最後の仕事

 厚生労働省によれば、2016年時点で日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性80.98歳といずれも過去最高を更新した。祖父母世代にとって、親の介護と育ての時期が重なるケースも今後は増えていくことだろう。親とのダブルケアは当然、体力や時間、金銭面で大きな負担になる。

祖父母のサポートがなければ子育てができない状況は本来、好ましくありません。親世帯を少しずつでも生活面、経済面で自立させることが、祖父母世帯にとって“親”として最後の仕事といえます」

 育てを頼みの綱にすると、祖父母が突然のケガや病気に襲われたり、介護が始まったりした途端に親世帯の生活まで破綻しかねない。最悪の状況を想定しながら、地域の子育て支援事業(ファミリー・サポート・センター)を利用するなどして、できる限りの対策を打つべきだろう。

 また、離婚などをきっかけに、ひとり親になった娘・息子がを連れて実家に戻り、祖父母と同居するケースも増えている。

「同居を始める前に、支援できるお金や期間、手助けできること・できないことを親子できちんと話し合うことが大切です」

 いざ同居が始まると甘えが出てしまい、なし崩し的に祖父母への負担が大きくなりがちだと、棒田さんは注意をうながす。

 最後に、「育てをする際に覚えておきたい心得10か条」を棒田さんに教えてもらった。

(1)育児の主役はパパ・ママ、祖父母はサポーター

(2)パパ・ママの話を聞く

(3)今と昔の子育ての違いを知る

(4)とがめるより、補う

(5)ほかの子・親と比べない

(6)手、口、お金は出しすぎず、心と体力にゆとりを

(7)親しき仲にも礼儀あり。「ありがとう」「ごめんなさい」を言う

(8)のほめ役、夢の応援団になる

(9)自分のライフスタイルも大切に

(10)老いる姿をに見せる

 今の高齢者は若々しく見える人が多い。だからこそ親たちは「大丈夫」と安心してを預けるのだろう。だが、加齢につれて体力は落ちていき、年々疲れやすくなるのも現実だ。

「自分たちの生活を大切にしつつ、体力的にも経済的にも、そして精神的にも余裕をもって、楽しみながら育てをしてほしいです」

 祖父母は老いる姿を見せて!

<教えてくれた人>
棒田明子さん◎NPO法人育て・ニッポン理事長。全国各地で「育て講座」や行政との共同プロジェクトを行う。また、産後ケア、多世代交流を中心としたまちづくりなどの調査、研究に携わる