また、過去にいじめられた経験があると答えた地下アイドルも52.1%と、一般の若者11.7%に比べてとても高かったという。

 姫乃さん自身、統計どおり両親にはとても愛されて育った。そして統計どおり中学時代に熾烈ないじめにあい、心が壊れるような経験をした。地獄のような中学時代を経て高校のときに出会ったのが地下アイドルの世界だった。

「全く地下アイドルという存在は知りませんでした。誘われて小さなライブハウスに行ったら、知らないアイドルの人たちが歌っていて。劇場が少ないから手を振ってくれたり、すごくコミュニケーションしてくれるんですよ。すごくかわいい!! 応援したい!! って思いました。そして私も地下アイドルになって壇上で歌うことになりました」

自分の予期せぬ場所に居場所が見つかることも

 16歳で地下アイドルになり、芸歴は8年以上になる。その道はトントン拍子だったわけではない。高圧的な人や下心がある人の仕事を受けて精神的に疲労したり、働きすぎてうつになってしまったこともあった。

 本書はアンケートに基づく統計の話はもちろん充実しているが、姫乃さん自身が経験した体験も、丁寧に描かれている。読むうちに感情移入してしまい、つい目頭が熱くなる。

「中学時代はいじめられて、世界の中に私の居場所がなくなってしまって“ずっとこのままかもしれない”と思い悩んでいました。両親はいつかいなくなってしまう。そのとき、私はうまくやっていけるだろうか? 煩悶(はんもん)していたときに、人に誘われてなんとなく入った地下アイドル業界ですけど、私はそこに自分の居場所を見つけることができました。

 この本は地下アイドルを全く知らない人にも読んでもらいたいです。私も、業界に入るまで地下アイドルについて何も知らなかったですから。どこにも自分の居場所が見つけられなくて鬱屈(うっくつ)した日々を送る人に“自分が全く想定していなかった場所に、自分の居場所が見つかることがある”ということを伝えられたら何よりうれしいなと思っています

 姫乃さんいわくアイドルの定義は『魅力が技能を上回っている人』だそうだ。つまり「歌がすごく上手」「ダンスがとてもうまい」ということではなく、「なんかこの人好き」という存在である。たしかに姫乃さんと話していると、応援したい気持ちになってくるから不思議だ。最近では地下アイドル業だけでなく、司会業や執筆業でも活躍がめざましい姫乃たまさん。どこかで見かけたら、ぜひ応援しましょう!!

取材の後はトークイベントに参加。会場でたくさんのオリジナルグッズを販売する姫乃さん。ファンとのチェキ撮影も行われ盛り上がっていた。撮影/吉岡竜紀
取材の後はトークイベントに参加。会場でたくさんのオリジナルグッズを販売する姫乃さん。ファンとのチェキ撮影も行われ盛り上がっていた。撮影/吉岡竜紀
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(取材・文/村田らむ)

<取材後記>
 地下アイドルと呼ばれる人たちの実態がわかる本だ。年齢、収入、恋愛など、本来は秘密にしておきたいブラックボックスも赤裸々に描かれている。ただ、作者自身、地下アイドルなので下世話な書き口にはなっていない。読み終わったころにはなんだか地下アイドルを応援したくなっている、そんな一冊だった。

<編集は見た! 著者の素顔>
 “地下アイドル”というものに偏見があった。「性格が暗そう」「病んでそう」「ファンが怖そう」とか思っていたかも。ごめんなさい。お会いした瞬間、偏見すべて吹き飛びました。本当に姫乃さんは可愛らしく美しく、知的で朗らかな方でした。インタビュー取材の後は、今回のインタビュアー・村田らむさん主宰のトークイベントにゲスト参加されていた姫乃さん。テーマの「エロ本」についても造詣が深く、トークも上手。マルチな才能を発揮していました。

<プロフィール>

ひめのたま◎日本の女性アイドル、ライター。自らを地下アイドルと称している。姫乃たま名義以外にも、セルフ・プロデュースユニット「僕とジョルジュ」、DJまほうつかいとのユニット「ひめとまほう」としても活動している。東京都世田谷区出身。自称「下北沢生まれ、エロ本育ち」。