次に、販売元の候補として挙がったのは、岩手の県産品を扱う『岩手県産株式会社』。当時、商品開発を担当していた長澤由美子さんも、在庫のリスクが真っ先に浮かんだ。
「岩手缶詰さんの製造ロット数は、1回で4万8000缶。高橋さんのコンセプトには賛同したものの、それだけの数を売り切れるのか不安を覚えました。けれど私たちも最終的には、“売れなかったらみんなで頑張ろう!”と取り扱いを決めました」
商品の核となるデザインは外部の会社に依頼。こだわったのは「棚に置いたとき、圧倒的に目立つこと」と「女性でも購入しやすいこと」だ。
「日本の缶詰は総じてやさしい色みが多く、この並びに原色をぶち込めば絶対に目立つと確信していました。また、ターゲットは女性と決めていたので、部屋に来た彼氏に見られても、ママが旦那さんやお子さんに出しても、恥ずかしくないデザインを目指したんです」(高橋さん)
肝心の味については、首都圏の女性に試食をしてもらいながら、何度も改良を重ねた。
「普通の開発は長くて半年程度。しかし徹底的にこだわり、第2弾のレモンバジル味なんかは完成までに1年半ほどかかりました」(佐々木さん)
こうして完成したサヴァ缶は、今年の1月時点ですでに280万缶以上を販売し、いまなお品薄が続いている。
「あれだけ被害を受けた東北からも、大ヒット商品は作れる。まだまだやり直せる。そんなモデルケースになれたかなと思います」(高橋さん)
ちなみに、フランス語で「元気?」を意味する商品名「Ca va?(※Cにセディーユ)」は、開発中に高橋さんがサバ缶とかけて思いついたダジャレだそう。
しかしそこには、被災地から応援してくれた人々への、感謝を込めたメッセージが隠されている。
みんな元気? こっちは元気にやっているよ。