ウディ・アレン作品の中でも高い人気を誇る『ブロードウェイと銃弾』は、芝居づくりに熱中する人々を描いたバックステージものの傑作コメディー。これがミュージカルになったら、ますますカラフルでスタイリッシュ。楽しさも倍増だ。
本作で主人公のデビッドを演じるのが、ミュージカルやストレートプレイなどで大活躍中の浦井健治さん。禁酒法時代のブロードウェイで成功を夢みる若き劇作家のデビッドは、浦井さんによれば「巻き込まれ型というか、キャラ立ちしている人たちにひたすら振り回されるキャラクター」。個性豊かな脇キャラに比べると「普通」に見えるが、実は一筋縄ではいかない男なのだ。
「普通っぽく見えて大女優にのめり込んだり、策士な部分もある。でも、すべてが行き当たりばったり(笑)。周囲からの影響を受けやすすぎる人で、人間味あふれるキャラクターです」
周囲に順応できるキャラがハマった
そのデビッドに最も強い影響を及ぼすのが、ギャングの用心棒、チーチという男。城田優さんの演じるチーチは、コワモテながら芝居づくりに意外な才能を発揮! デビッドと奇妙な信頼関係を築いていく。この配役を推したのは、城田さんなのだそう。
「最初にこの作品を福田雄一さん演出、優がチーチ役でやると決まって“じゃあデビッドはどうする?”となったときに、優が“浦井がいい!”って言ってくれたそうなんです。それがすごくうれしかった。僕と優とは『ロミオとジュリエット』で親友役をやり、『エリザベート』ではキスもした戦友ですからね」
日本のコメディー王・福田雄一に「デビッドに浦井くん、チーチに城田くんをキャスティングした時点で、作品は完成したも同然!」と言わしめたこのコンビ。演出家的な視点を持つチーチが、実際に演出家としてもデビューした城田さんに重なるのは納得だ。では、浦井さんがデビッドに「ピッタリ」と言われるのは?
「自分もけっこう飄々(ひょうひょう)としてるって言われるし、タイプ的にはいじられキャラ。優は今回、稽古場でいかに浦井健治をいじり倒すかに賭けてるらしい(笑)。僕自身はデビッドほど人の影響を受けるほうではないけれど、意見をするより、周囲に合わせて1回やってみるタイプ。みんなと和気藹々(あいあい)とやるのが好きで、比較的どんな人のやり方でも順応できると思う。
優からは“ぬるま湯に浸かってでもできるだろうけど、45度くらいのお湯に入ってピリッとしたデビッドがいる、となればいいね”って言われていて。周りとのバランスを考えながらやりたいと思っています」