僕の役のつづきを考えてもらえたら

 今回の役柄とは違うのだが、浦井さんでコメディーとくれば、忘れられないのが劇団☆新感線の『薔薇とサムライ』、『ZIPANG PUNK~五右衛門ロックIII』で演じたシャルル王子だ。

「ありがとうございます!あの役、もともとはもっと“王子”だったんですよ。王子キャラを扱ってパロってやろうという狙いだったようなんですけど、やってみたら予想とは違うことになったみたいで、古田新太さんは“お前、この野郎!”って(笑)。脚本の中島かずきさんからは“浦井シャルルが楽しかったがために役がいつの間にかひとり歩きして、ああなっちゃった”と言われました。そして賞状をいただいたように思っているのが“シャルルを見ると元気が出るんだ!”という中島さんの言葉。何よりのご褒美です!」

浦井健治 撮影/森田晃博
浦井健治 撮影/森田晃博
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 福田雄一さんが浦井さんに注目したのも、シャルル役を気に入ってからだそう。

「初めてお会いしたとき、僕が福田さんに“見てください!”ってお見せしたのが、『勇者ヨシヒコ展』で僕がメレブの顔出しパネルで撮った写真。“こいつバカなの!?”って(笑)、そこからまた興味を持ってくれたみたいです」

 ときにイタズラ好きな少年っぽい表情を浮かべ、話してくれる浦井さんは癒しキャラ。舞台の世界で引っ張りだこなのは、実力に加え、このキャラが運を引き寄せた部分もあるに違いない。

「優もやった『美少女戦士セーラームーン』のタキシード仮面役でオーディションに受かったときは、ミュージカルのことは何も知りませんでした。でもファン感謝イベントがあって、お客様とコミュニケーションをとったり拍手をいただいたりしたとき、血が沸き立つような感触があって。そこからのめり込んだんです。『エリザベート』に出ると決まってから初めて『レ・ミゼラブル』を見たくらい無知でしたけど、出会いに恵まれましたね。それが今もずーっと続いています」

 責任もテーマも重い作品を次々と成功させ、『デスノート』や『ペール・ギュント』ではアジアでの評価も手にした昨年。そんな経験の後、この作品は気楽に楽しむことができそう?

「いかに楽しむか、ですね。デビッドは“完璧だ、僕の脚本は”と歌うけど、周りは100パーセント否定してます(笑)。そんな中でチーチの才能に気づき、認めて、憧れるし悔しいんだけど、自分では彼のところに届かないという諦(あきら)めも感じるようになって、そこから成長していくんですよね。だからお客様が“デビッドはこの後どうなったんだろう?”みたいなことを考えてくれたらいいですね。成功するのか、ダメになるのか、細々とやっていくのか? きっとエレンとは結婚するだろうな。でも離婚するかもしれないね(笑)、とか。そんな話をしてもらえる存在になれたら素敵ですね」

<舞台情報>

『ブロードウェイと銃弾』

 

1994年にウディ・アレンが脚本・監督を務めてアカデミー賞7部門にノミネートされた傑作映画を、2014年にウディ・アレンが自らの脚色でブロードウェイ・ミュージカル化。1920年代~1930年代のスウィンギングな曲をアレンジして使い、『プロデューサーズ』のスーザン・ストローマンによるダイナミックな演出・振り付けで観客席の熱狂を呼んだ。日本版は2月7日~28日 東京・日生劇場、3月5日~20日 大阪・梅田芸術劇場、3月24日~4月1日 福岡・博多座で上演される。

<プロフィール>

うらい・けんじ◎2000年『仮面ライダークウガ』で俳優デビュー。翌年、『美少女戦士セーラームーン』で初舞台を踏み、2004年にはミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役に抜擢される。以後、ミュージカルのみならずストレートプレイ、ドラマなど幅広いジャンルで活躍。主な出演作品に、舞台『アルジャーノンに花束を』、『ヘンリー六世』三部作、『デスノート』、『王家の紋章』など。

(取材・文/若林ゆり)