古くて新しいメディア。いま「紙芝居」が熱い!
夕方になると自転車を引いたおじさんが原っぱにやってくる。ラッパで子どもを集めて飴を売り、『黄金バット』を語り始める……。多くの人にとって「紙芝居」のイメージはこうだろう。テレビの普及により、街頭紙芝居は姿を消した。
しかしいま、この紙芝居が再び人気に。保育園や幼稚園だけでなく、図書館、病院、高齢者施設などさまざまな場所で演じられている。これまで消耗品扱いだった紙芝居を収集する図書館や、研究機関も増えた。
「紙芝居と絵本はまったく別なものなんです。前者は脚本、絵本は文で語ります。紙芝居は演じることで聞き手にわからせるので、それに合った描き方をしなければなりません。絵本をそのまま拡大しても紙芝居にはならないのです」
と長野ヒデ子さん。絵本作家として活躍しながら、30年ほど前から紙芝居を描いてきた。紙芝居文化推進協議会の会長も務めている。
この日、千葉県市川市で行われた『この本だいすきの会』の集会で、長野さんの講演があり、その中で自作『ころころじゃっぽーん』の紙芝居を演じた。“舞台”の3面の扉を開くと、物語が始まる。語り口調や画面を抜くスピードなど、演じ方によって聞き手に与える印象も変わってくる。
「まだ言葉のわからない0歳児から認知症のお年寄りまで、幅広い世代に向けて紙芝居は演じられています。紙芝居サークルも各地にあります。また、手づくり紙芝居も盛んになっています。図工の時間に紙芝居をつくらせる小学校もあります。紙芝居だと、絵を描くのがうまくない子が、演じ方でも評価されるということがあるので、子どもが輝くんです」(長野さん)
紙芝居は日本以外にも広がっている。2001年創立の紙芝居文化の会によれば、欧米からアジアまで46の国と地域に海外会員がいるという(『紙芝居百科』/童心社)。生身の声で演じる紙芝居に魅力を感じる人が、世界中にいるのだ。
神奈川県・鎌倉で行われた長野さんの実演では、小さな子どもたちが長野さんと一緒に声をそろえて、すごい熱気だった。この子たちがいずれ自分でも紙芝居を演じるようになるかもと思うと、楽しくなった。