ちなみに、スイスでは、女性は給与の80%を受け取る形の育児休暇を14週間取得でき、仕事に復帰できることになっている。しかし、ここにたどり着くには、何度も投票で否決され、2005年の国民投票でようやく認められたという経緯がある。
ラクローの前の職場では、父親が5日間の有給育児休暇を取ることが認められていたほか、無給でより長い休暇を取ることはできた。が、彼は子どもと一緒にいながら、収入を得る方法を考え退職。個人でコンサルティングの仕事をしながら、4カ月の休暇を取った。彼にとって、これは有意義な決断だったという。
育休を取ると、子育てにも積極的に
「家族を作り上げ、小さな子のすばらしい成長を日々そばで見ることができる体験はかけがえのないものだった」とラクロー。育児休暇を取って妻と過ごす時間が増えたことで、夫婦の距離も縮まったとも話す。
もっとも、欧州の場合、各国で有給育児休暇制度はかなり異なる。北欧はおおむね充実しているが、東欧諸国の取得率は低い。ただ、全般的に父親向けの育休の充実を図る国は増えている傾向にあると言えるだろう。長らく、産休・育児休暇後進国と言われてきた米国の文化も今後さらに変わるかもしれない。
コロンビア大学社会福祉大学院のジェーン・ワルドフォーゲル教授によれば、子どもが誕生した時期にある程度まとまった休暇をとった父親は「その後に実際の子育てをする傾向」が高い。これには、子どもが生まれて1年後のオムツ交換、食事を与えること、着替えや風呂の世話などが含まれる。こうした作業は子どもとの絆を深めるだけでなく、母親にとって必要なサポートにもなる。
現状、有給育休制度という意味では、日本は米国のずっと先をいっている。しかし、日本の男性による育休取得率は2016年時点で3.16%(これでも過去最高)程度しかない。ザッカーバーグのような経営者や、より若い世代が企業に増えるようになれば、あっという間に、父親による育休取得で日本を追い越す日が来るかもしれない。
アイネズ・モーバネ・ジョーンズ◎ライター/編集者(在シアトル)米ワシントン州シアトル在住。子ども向けの書籍「The Content」シリーズを手掛ける傍ら、自身のブログにて教育トレンドや子育て、社会問題などについて執筆している。