嘘なくリアルな
等身大のアリエル
小柄でキュートな末っ子キャラで、透き通った声を持つ若奈さんはアリエル役にピッタリだという声が多い。
「劇団でいただく役も子どもの役が多かったので、今回は芯のある女性ということであまり子どもっぽくならないように気をつけているのですが、やはり自分の実をもって嘘なくリアルに演じることを第一に心がけています。舞台を見てくれたお子さんからのお手紙を読むと、“アリエル、がんばって”と同じ目線のお友達感覚で見てもらえていることもあるようで、とてもうれしいですね。役に寄り添いながらも等身大のアリエルを表現できればと思っています」
『リトルマーメイド』といえば、圧巻なのが、幕が開くなり作品世界へと誘ってくれる海中シーン。フライングをしながらしなやかに泳ぐアリエルは優雅に見えるが、かなり体幹を鍛えないと難しそう!
「私は水泳を習っていたので“できるかも?”と思っていたのですが、まるで違いました(笑)。動きは水泳よりダイビングに近いのかな。2本のワイヤーを腰に装着しているだけなので、気を抜いたらクルンと1回転してしまうんですね。腹筋と背筋でしっかり支えないと倒れてしまうので、吊られてバランスをとりながら泳いで、声を出す、歌うということがとても難しいんです。フライングは出演を重ねる中で、より成長していきたいところです」
一方、人間界の世界観は、海中とはまた違う表現がなされている。
「それぞれの世界がアリエル目線で表現されています。彼女にとっての現実である海中は奥行きのある3D、憧れである地上世界は絵本のような2D。絵本のページをめくるように、夢見た世界へガラリと変わるんですよ。そんな地上の世界で、声が出なくてもなんとか思いを伝えようとするアリエルに、エリックが“言葉なんていらないね”と言ってくれる。その“一歩ずつ”というシーンがすごく好きですね」
アリエルと同じように夢を叶えた若奈さんにとって、さらなる夢とは?
「まだ今は次のことや新しいことは考えられないですね。アリエル役はまだやり始めたばかりですし、とても楽しいので、まだまだこの作品に貢献したいし、この作品で成長したい。ハッピーエンドで、みなさまが100%笑顔で帰ってくださるのが本当にうれしいんです! お客様の反応がじかに伝わってきたり、スタンディングオベーションをしてくださったりと、愛が大きくて、幸せです。求められる限り、この作品に出演し続けていきたい。もっと深めて、もっとお客様の背中を押せるような作品にしたい。今は、それだけを強く願っています」
<出演情報>
『リトルマーメイド』
ディズニーが大ヒットした同名アニメーションをミュージカル化。劇団四季ではディズニーとの提携4作目として2013年に開幕した。日本版ではディズニーと四季チームの共同作業により、ビジュアルや演出効果面がより進化している。名古屋四季劇場にて8月26日まで、福岡・キャナルシティ劇場にて11月4日まで上演中。大阪四季劇場にて10月13日より開幕予定。
取材・文/若林ゆり