今回、永野芽郁演じる『半分、青い。』の主人公・鈴愛は、左耳が聞こえないというハンデを乗り越えて成長していく。実はこれ、北川悦吏子氏が突発性難聴によって左耳が聞こえなくなった自身の経験に基づいているという。
さらに、高度経済成長末期~'90年代を舞台とし、鈴愛は北川氏の故郷・岐阜から上京するだけに、自伝的朝ドラの要素がかなり濃い。
「正直、不安です(苦笑)。私情を挟めば挟むほど、視聴者は感情移入ができなくなる。さらに、ヒットの法則に大きく関与する国家的大事件もない。
連ドラと違い、朝ドラは半年間見続ける耐性が求められます。何が起こるか分からない展開を、半年間も続けることはリスキーでしょう」(草場氏)
イケメンが救世主なるか
その一方、オープニングの明るい主題歌や、ヒロインが故郷から離れること。昭和的ノスタルジックな舞台装置といった、ヒットの法則に必要な、いくつかの要素は満たしている、と草場さんが口にするように、朝ドラらしさを踏襲している部分もある。
「ヒロインの夫役を演じた、『ふたりっ子』の内野聖陽さんや、『あぐり』の野村萬斎さん。『オードリー』の佐々木蔵之介さんのように、女性をキュンとさせる男性がいるかどうかもポイントでしょう。
幼馴染役の佐藤健さん、そして鈴愛の師匠的存在となる豊川悦司さんが、どれだけ女性のハートを掴めるかで、ヒットにつながってくると思います」(木俣氏)
朝からモヤっとしてしまうような展開は望んでいない。過去には、『君の名は』のようにメロドラマに挑戦して辛酸をなめた例もある。カラッとさわやかに元気よく、それこそが視聴者の見たい朝ドラ像だ。
「数年に一度、朝ドラは意欲作を発表します。そういった挑戦が可能なのは、ヒットの法則に基づいて、みんなが望む朝ドラを作ろうと思えば、いつでも作れるという自信もあるからだと思います。実際、次回作の『まんぷく』は“ザ・朝ドラ”というべき王道です」(草場氏)
「『まんぷく』のヒロインは、実績のある安藤さくらさんですが、 長谷川博己さんという素敵な旦那さんとバディな感じで、物語が展開されるのかなって。『ゲゲゲの女房』的な感じになるのかな!? などなど、想像できるところに連綿と続いてきた朝ドラのいいところがあります」(木俣氏)
法則は絶対ではない。だけど、50年以上も続いてきたドラマだからこそ視聴者が求めている願望がある。
「朝ドラは温故知新の集大成です。無理に新しいことをする必要はない。過去の作品をリスペクトし、ほんの少しだけ新しいエッセンスを入れて換骨奪胎すれば、みんなが見たい朝ドラになる。
夢中にさせるフォーマットがあるだけでもすごいこと。朝ドラ成功の鍵は、視聴者の期待にどれだけ応えることができるかだと思いますね」(草場氏)
〈取材・文/我妻アヅ子〉