歌唱のテクニックだけにとどまらず、秀樹さんが一般的に広めた「文化」は多い。前出の音楽ライターは言う。

「スタンドマイクを使ったパフォーマンスも、日本ではおそらくヒデキが最初。ワンマンでの初の野球場コンサートもそうです。今では定番の、コンサートにペンライトを導入し定着させたのも、ヒデキです」

『YOUNG MAN(Y.M.C.A.)』では、「ザ・ベストテン」で9週連続1位、この曲は番組最高得点にして、後にどの歌手も獲得できなかった「9999点」も記録している。

 人気ドラマ『寺内貫太郎一家』(TBS系)などでは俳優ととして、『カックラキン大放送!!』(日本テレビ系)や『8時だョ!全員集合』(TBS系)などではコントに挑戦、CMでは「ヒデキ、感激!!」のフレーズが印象深い「バーモントカレー」など、幅広くお茶の間の人気者だった。

「親しみ深さを持ったスターということで、当時の子どもたちの人気も高かったです」(同)

 そんな気さくな秀樹さんの一面について、ある雑誌編集者がこんなエピソードを語ってくれた。

「10年以上前ですから、一度目の脳梗塞から復帰された頃だと思います」

 東京・世田谷の子ども服店で編集者がショッピングをしていると、小さな子どもを連れた秀樹さんと奥さんに遭遇したという。

「ご家族と一緒に、楽しそうにお子さんの洋服を選んでいたのを覚えています。その様子から、お子さんやご家族への愛を感じました。

 西城さんのお子さんより少し大きかったウチの子を、『おいくつですか?』とテレビと同じ優しい声と表情で聞かれました。気さくでスターぶることの全くない方だなと感じたことを覚えています」(同・編集者)

 世代を超えて多くの人々に愛された西城秀樹さんの歌声を聞くことは、もうできない。

<取材・文/渋谷恭太郎>