来年はもっと「元気」な姿を
2012年10月29日の東京・中野サンプラザ。
アンコールではもちろん『YOUNG MAN』を熱唱し、さらに2度目のアンコールの声がかかった。
復活を待ちわびたファンのために、秀樹がラストソングに選んだ曲が『青春に賭けよう』だった。
ステージに映し出されたスクリーンには、熱唱する若き日の秀樹と熱狂するファンの姿が映し出されていた。
《ありがとう!》
「これまでの人生で数え切れないほど口にしている言葉だけど、本当に心を込めて言えるようになったのは、やはり病気と向き合うようになってからかもしれない」
不死鳥となって甦った西城秀樹は、舞台を終えてそう私たちに語りかけた。
コンサートを終えた秀樹の楽屋には、秀樹の復活を祝福する多くの仲間たちが駆けつけていた。
早見優に話を聞くと、
「秀樹さんの歌唱力は、本当に、本当にすごいって感動するばかり。森口博子ちゃんと2人で“ヒデキ~!”と叫びながら、ペンライトをしっかり振ってきました。たった8か月でこんなに元気になっちゃうなんて、本当に驚きました」
今年の2月、熊本のホテルのエレベーターの出口で偶然再会した秀樹は、杖をつき、
「今回はカムバックできるか自信がないな……」
と、不安を口にしていたからである。
前出のカメラマン・武藤義は、秀樹の変貌ぶりに驚きを隠せなかった。
「病気で苦労したせいか、歌に深みが出てきて素晴らしかった。円熟してきた彼の歌がこれからとても楽しみだね」
その秀樹に、
「ありのままの自分を見せることができましたか?」
という質問をぶつけてみた。
すると秀樹は、
「丸裸になった自分を見せることができた。自分をさらけ出すのは恥ずかしいよ。でもさらけ出したから、みんなも涙してくれたんじゃないかな。来年はもっとよくなったぼくの姿をみんなに見せたいな」
そう言ってペットボトルの水を飲むと、
「中国や香港といったアジアのファンも心配してくれている。元気になった姿をぜひ見せたいね」
スターとしてカッコよさを追い求めていた第一の人生。妻と出会い、最初の脳梗塞を患った第二の人生。そして今、秀樹は、第三の人生を精いっぱい生きている。
飾らず、隠さず、気取らず、そのままの自分でいることが、秀樹は一番カッコいい。
<取材・文/島 右近(しま・うこん)>◎放送作家、映像プロデューサー。文化、運動をはじめ幅広いジャンルで取材・文筆活動を続けてきた。ハワイのテレビ番組『ハワイに恋して』(BS12ほか)に携わったことをきっかけに、マリンスポーツにはまる。沖縄の文化・音楽を研究中。