「歯周病のなかには進行の早いタイプも。放っておいたら、あっという間に歯を失うことになります。気になる症状があれば、ためらわずに受診してほしいですね」
日本歯周病学会は、1度でも出血に気づいたら歯周病の疑いがあるとして、早めの受診をすすめている。
さあ、気づいたいまが始めどき。まずは歯周病について正しい知識を手に入れ、効果的なケアを実践しよう。
全身を蝕む恐怖の歯周病毒素
いまや国民病ともいえる歯周病。身近な病気だけど、そのメカニズムは、あまり知られていない。
「歯周病は細菌による感染症です。自分以外の人やペットの犬などからうつり、口の中のケアが悪いと発病します」
そう話すのは前出・若林先生。スプーンやストローの共有、親子や恋人同士のキスでもうつることがあるという。数は少ないが、遺伝子が影響する若年性の歯周病もある。
歯周病と聞いて多くの人が抱くのは、食べカスが歯垢に変わり、歯にダメージを与えるイメージでは? 実は、歯垢のほとんどは食べカスではなく細菌のかたまり。この中に歯周病の原因となる菌も含まれている。
「そうした細菌によって、歯そのものではなく、歯を支えている歯槽骨や歯肉などの組織が細菌に侵され、破壊されて起こるのが歯周病です」(若林先生、以下同)
口の中には常時、700種類もの細菌がいる。このうち歯周病の原因となる菌は、わかっているだけでも100種類以上あるといわれている。
「人間ひとりの口の中には何種類かの歯周病菌がいて、コンビネーションで悪さをしていきます。なかでも、レッドコンプレックスと呼ばれる悪性度の高い3種類の菌がいると、歯周病は5倍早く進みます」
歯周病菌はタンパク質やアミノ酸をエサにして、歯の周囲にネバネバとした歯垢を作る。歯のみがき方が悪いと、歯に付着した歯垢はどんどん厚くなり、さらに菌がつきやすくなる。
「虫歯菌は酸素を好み、歯の表面につきますが、歯周病菌は酸素が嫌いなので歯と歯ぐきの隙間に入り込みます。歯と歯ぐきに間には1~2ミリの隙間があり、ここから奥へ奥へと潜り込んでいくのです」