以来、不思議なことに奈央さんは1度も吐いていない。しかし、普通の食事をするようになると、すぐに脚がパンパンにむくみだし、“太る”という激しい恐怖に襲われる。
「長年、摂食障害でいると、自分の身体を触れば、少し太っただけでもわかるんです」
起きたら、心臓が止まっているかも
そこで「食事の量を減らしてほしい」「帰りたい」と何度も訴え、ついにはハンガーストライキという手段に出る。
「食事を拒み過度に活動するとどんどんやせていき、ついに25キロを切り、骨と皮だけの状態になりました」
ただ寝ているだけ、立っているだけで心臓がドクドクと脈打つのがわかった。
「呼吸をすると肺のあたりが痛み1日中、耳鳴りがして音がよく聞こえませんでした」
筋力が落ち、ベッドから起き上がることさえも容易にできなくなった。
「“朝、起きたら、奈央の心臓が止まって死んでいるかもしれない。本気でそう思っていたよ”。お父さんが当時のことを振り返って、こう話してくれたことがありました」
奈央さんが「お父さん」と呼ぶ人、それは実の父親ではなく、なのはなファミリーの創設者である、小野瀬健人さんのことだ。そして、「お母さん」と呼ぶ、有元ゆかりさんは、公私ともに小野瀬氏のよきパートナーだ。
著書に『脳とココロ』(かんき出版)、『「食べない心」と「吐く心」』(主婦と生活社)などがある小野瀬さんは、かつてジャーナリストとして執筆活動をする中で、“摂食障害”という大きなテーマに直面した。それが2004年に、なのはなファミリーを開設するきっかけにもなった。