歌舞伎作品を舞踊劇にしたい
頭の中には、未来座シリーズで今後やってみたい作品の構想もあるようだ。
「歌舞伎の作品を舞踊劇で見せるということをやりたいと思っています。例えば忠臣蔵は全部を歌舞伎でやると丸1日かかってしまうのですが、舞踊劇にするとたぶん2時間以内にはなると思うんですよ。それは言葉がいらない踊りだからできることだと思いますし。
四谷怪談も舞踊劇で見てみたいと思ったりするんですよね、あれも歌舞伎でやれば1日かかりますから。歌舞伎の作品というものを日本舞踊の世界で舞踊劇にするっていうのは、とても可能性を感じますね。
僕は歌舞伎役者でも日本舞踊家でもあるので、それができるように考えられる立場じゃないかなとは思っています」
若いころから、劇団☆新感線の舞台やミュージカルに出演されるなど、歌舞伎にとどまらず活動してきた幸四郎さん。
近年も’15年の歌舞伎ラスベガス公演、昨年はフィギュアスケートと歌舞伎のコラボ『氷艶HYOEN2017-破沙羅-』を成功させるなど、さまざまなエンターテイメントにチャレンジしている。そのエネルギーの源とは。
「好奇心というか、ミーハーってことでしょうね。何か新しいものを作ってみたいということよりも、こういうのあったら面白いだろなっていうふうに思って、それがないんだったら作るしかないっていう(笑)。
見たいものがないんだったら、もう作るしかないっていう。それの連続ですね。だから、新しいものを作らなければという使命感というよりは楽しみです」
幸四郎さんを先頭に生み出される、日本舞踊の新たなエンターテイメントにも大いに期待したい。
〈取材・文/井ノ口裕子〉
【PROFILE】
まつもと・こうしろう 1973年1月8日、東京都出身。今年、七代目 市川染五郎から、十代目 松本幸四郎を襲名。日本舞踊松本流の三世家元。七月歌舞伎(7月3日~7月27日@大阪松竹座)出演。7月31日、京都ホテルオークラにて松本幸四郎ディナーショーを開催。
【STAGE】
第2回 日本舞踊 未来座=裁(SAI)=『カルメン2018』
日本舞踊の新たな可能性を探る目的で、日本舞踊協会メンバーが昨年立ち上げた未来座によるSAIシリーズの第2弾。世界的オペラ『カルメン』を題材にした創作舞踊で、さまざまな運命に裁かれながら生きる女と男を描く。若手が主役のソル組(カルメン役:市川ぼたん、ホセ役:四代目 中村橋之助)と、実力派が主役のルナ組(カルメン役:水木佑歌、ホセ役:花柳寿楽)のダブルキャストで上演。6月22日~6月24日@国立劇場小劇場
【問い合わせ】公益社団法人 日本舞踊協会/公式ホームページwww.nihonbuyou.or.jp