病気やケガに備える見直し術

「私は、病気やケガによる手術・入院など“起きたとしても出費が少ないリスク”には、貯蓄で備えたほうがいいと考えています」

 と長尾さん。手術や入院の出費が“少ない”ってどういうこと?

「公的な健康保険には『高額療養費制度』というものがあり、1か月の医療費が一定額ですむようになっています。私が2週間入院・手術したときは、高額療養費制度が適用された医療費、差額ベッド代、食費で計14万円ですみました」

 でも14万円って、けっこうお高い金額では?

「では、医療保険保険料と比べてみましょう。保険料月額4500円の医療保険(入院日額1万円・上限60日タイプ)に加入していたとします。14日間の入院だと、手術給付金と合わせて24万円が受け取れますが、保険料を10年払い続けると50万、20年で100万円を超えます。元が取れるとは考えにくい。

 だったら、医療保険は解約して、保険料分を貯蓄したほうがいいのでは? 30万円ほどキープしておけば、短期入院であればなんとかなります。生命保険の医療特約も同様にリストラの検討を。死亡保障のみ残して、医療特約をはずすことも可能です」(長尾さん)

「日本人の死因の上位を占める、がん、急性心筋梗塞、脳卒中に対して保障する『三大疾病保険』についても、解約を検討してみては。

 急性心筋梗塞と脳卒中は、保険会社が決めた所定の病状に一定期間以上なったら一時金が払われるものですが、条件が厳しすぎて使いものにならないことが多い」(長尾さん)

 一方、長尾さんはがん保険については肯定的だ。

「がんの場合、退院後も、放射線治療や抗がん剤治療のダメージで前のように働けなくなる人がけっこういます。それによる年収ダウンが怖い。

 古いタイプのがん保険は入院保障が中心であまりおすすめしませんが、新しいタイプのがん保険で、診断一時金が出る、そして通院治療に対応するものでカバーするといいですね」

 横川さんも、もしがんに備えるなら新しいタイプの保険をすすめるという。

「ゲノム治療など新しい治療法が出てくる可能性が高い。保険のきかない自由診療に対応するものが安心でしょう」

 がんで収入がダウンするという事態に、がん保険ではなく就業不能保険で備えるという手もある。

「就業不能保険の場合、がんをはじめとする病気やケガで働けなくなったら、入院していなくても毎月、保険金が受け取れます。自営業の人、住宅ローンを抱えている人などはこちらもおすすめ」(長尾さん)