結婚前にきちんと情報収集を
検査を受けるか、受けないか。産むか、産まないか──。厳しく難しい選択が多くの場合、母となる女性たちに突きつけられる。
NIPTは、母体への負担が少ない採血によって調べることが可能で、検査の精度も高い。費用は約20万円と高額だが、これまでに5万組を超える夫婦が受け、さらなる広がりをみせている。
「NIPTを実施できるのは本来、日本産婦人科学会が定めた医療機関のみ。遺伝的に異常が心配されたり、35歳以上の妊婦しか受けられない規定があります。それがいまでは、一般の病院が少々安い価格で、若い人にまで対象を広げている。少しタガがはずれてきている印象ですね」
検査で陽性の診断が出た場合、確実な診断を受けるため『羊水検査』が必要になる。ただし、おなかに針を刺して羊水を採取するので、0・3%とはいえ流産のリスクがある。
NIPTには「命の選別」という批判がある。
「染色体異常と診断を受けたうえで出産に至った人は、わずか3%という調査結果が出ています。もちろん流産してしまったケースもありますが、年齢を問わず、大多数が中絶を選んでいます。これはダウン症の子どもがどう生きるのか、どういう生活を送っているのか、実態をよく知らないことが大きい。だから不安になるのでしょう」
障がいのある赤ちゃんは、ダウン症だけに限らない。NIPTを受けてもわからない障がいもあれば、分娩時のトラブルから、後天的に重度の障がいを負うこともある。
生まれてくる命とどう向き合うべきか。
「それを夫婦で話し合うのは、不妊治療を始める段階では遅い。結婚してすぐ、できれば結婚を決める前に、きちんと情報を集めて知識を身につけ、考えておくことが大切です」
〈PROFILE〉
松永正訓 先生◎「松永クリニック小児科・小児外科」院長。医師、医学博士 。千葉大学医学部を卒業後、大学病院を中心に19年間にわたり、小児だけを専門に臨床、研究、医学教育を行う。虫垂炎から小児がんまで1800人への手術と、千葉大学で1500人への講義を行っている