思い出・記録を次の飼い主に託す
引き取ってくれる知り合いがない。お金もない。そんな場合でも、愛犬・愛猫の新しい飼い主が見つかる可能性を高め、スムーズな譲渡につなげる方法がある。
「ポイントはたった2つ。“しつけ”と“健康管理”ができた子に育てておくことです」
次の飼い主が、「この子だったら欲しい! 一緒に暮らしたい」と思ってもらえるように、愛犬・愛猫を育てることが大切だと奥田氏は指摘する。
「しつけといっても、何も難しいことはありません。誰に対しても、吠(ほ)えたり噛みついたりすることなく、落ち着いて対応できればそれでいいのです。むしろ、それさえできていれば、かなりもらわれやすくなりますよ」
健康管理については、年1回定期検診を受け、その記録をファイリングしておくことが重要だという。譲渡される側は、自分がこれから一緒に暮らすことになる犬や猫の健康状態が気にかかるからだ。持病はあるのかないのか。もしあるとしたら、どの程度で、医療費は年間どのくらいかかるのか。持病があったとしても、その事実を包み隠さずに、獣医師が診断した記録を残して次の飼い主に引き継ぐことで信頼感が高まるという。
「新しい飼い主さんが知りたいのは、健康状態もそうですが、要するに、自分が迎える子がどんなふうに過ごしてきたかということなんです。例えば、可愛い写真、動画をたくさん撮っておけば、大切に育てられてきたということを感じることができ、元の飼い主を信頼して、迎えることができます。それを見た新しい飼い主さんは、これからの暮らしを想像しやすくなります。たったそれだけですが、もらわれやすさにつながるんです」
ブログやSNSを利用している人は、これらのツールを活用してペットの情報を発信しておくと、それが思いがけず譲渡につながることもあると奥田氏は教えてくれた。
長年寄り添ってきた動物を手放すのはどんなにつらく、無念だろう。「この子の命に対して、自分が最期まで責任を持ちたい」と考えるのであれば、飼い主はボランティアや動物愛護団体などに頼る前に、まずは、大切な犬や猫の第2の家族を自分の力で見つける最大限の努力をしたい。それが、豊かで幸せな時間をくれる動物に対して、飼い主として最後にできる最大の贈り物であると同時に、果たすべき責任ではないだろうか。
(取材・文/高垣育)