日本全国どこでも起こりうる
一度始まってしまった人口流出はその後も止まらず、最後の炭鉱が閉鎖された1990年には、夕張の人口は2万1824人にまで減少しました。
著しい少子高齢化も見られるようになった、この窮地を脱するべく、夕張市は「炭鉱から観光へ」を合言葉に、大型リゾート開発へと舵を切ります。しかし、そこに待っていたのはバブル崩壊と“失われた20年”と呼ばれる、あの平成不況でした。
それまでの町の疲弊に加え、リゾート開発などの累積赤字がさらに重なり、限界に達した夕張は2007年、ついに財政破綻を表明します。その赤字額は約353億円。
企業でいえば倒産に等しい「財政再健団体」(当時)の指定を、全国で唯一受けた夕張市は、“鉛筆一本買うにも国にお伺いを立てる”というような状況の中、毎年、26億円にもおよぶ借金を返していくことになりました。
夕張は特別なケースで、自分にはあまり関係ないと感じる方も多いかもしれません。
しかし破綻に至った、ここ30年の夕張の実情は、基幹産業喪失のダメージという以上に、「人口減少と少子高齢化によって税収が減少した自治体の逃れられなかった現実」という側面が大きいのです。
視点を変えれば、人口減少と少子高齢化がすでに現実となっているこの日本で、これからの未来、全国どこでも起こりうるものです。
その流れの中で、稲垣さん、草なぎさん、香取さんという知名度も人気も全国クラスの3人が、今回「関係人口」創出を起点に地方社会と関わり始めたことは、非常に大きな意味を持っています。
特に興味を引いたのは、いままで東京一極集中の著しかったエンターテイメントの世界、東京の文化で生まれた彼らが、ついに地方社会との密な関係性を築き始めたということでした。
たとえば、彼らの所属していたSMAPの活動を振り返っても、国民的人気を獲得したアイドルたちの主戦場は、大手メディアが集中する東京。もしくはドームクラスのライブ会場があるような、大都市圏に限られていました。