結婚の決め手は生活 ケンカは時間のロス
「結婚する気がなかった」という下重さんは36歳のときに、テレビ報道マンで3歳年下の“つれあい”と称するご主人と結婚した。
「大恋愛が終わってくたびれ果てていました。相手は芸術家で、生活感のない人でした。私自身、生活感のあることが好きじゃないし、家の手伝いもしたことがない。一緒に誰かと住んで、その人のために料理をするなんて考えたことがなかったし、嫌いでした。
そんな私に生活は生きていく土台だと無言で示してくれたのがつれあいでした。料理好きで、包丁さばきは見事で味もおいしい。そういう姿を見て私にいちばん欠けている生活の大事さを悟りましたが、(心の)隙間に入り込んだのかもしれない(笑)」
夫婦の生活は、今は夜型の下重さんに対して、つれあいは朝型と対照的。
「夫婦ゲンカはあまりしませんね。お互いに仕事が忙しいこともあるけど、(ケンカは)めんどくさくて時間のロスとしか思わない。気分がよくないと物は書けないので、仕事のほうが大事です。
私は母親に愛情をかけられすぎたので、非常にわがまま。自分がいちばん大事な人間。まるで思いやりがないというか、人のことより自分のことしか考えてこなかった。でも、それはある時期から大人とはいえない。一緒にいる人のことを考える思いやり。そういうものが大事だと思えるようになり、心が通じる人がそばにいることのよさを45年の結婚生活でわかるようになりましたね」
形式的なことが嫌いで結婚式は挙げず、結婚指輪もしない下重さんに、インターネットやSNSを使って出会いを求める20代、30代の若者はどう映るのだろうか。
「いろんな出会いの仕方があるみたいだけど、そうまでして結婚したいのかな……。
戦後、日本は貧しかった。だけど精神的には自由な時代に育って、何を考えても何をしてもよかった。
今は窮屈な社会になっていて、人目やチェックするものがあったりしてめんどくさいことが多い。本人が気にしなければいいけど、SNSで知られてしまう世の中になって、嫌な時代になりつつある。結婚もそのひとつだと思います」