2014年に「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリー・ベスト10」「ミステリーが読みたい」の1位を獲得し、ミステリー3冠に輝いた人気短編集の3作品を初映像化。主演した3人の俳優たちが現場で見せた共通点と見どころとは―。
米澤穂信原作の人気ミステリー短編集『満願』を初映像化。「万灯」「夜警」「満願」の3作品に西島秀俊、安田顕、高良健吾がそれぞれ主演する。
「ミステリーと銘打っていますが、単に事件や犯罪などの表面上の事象だけではなく、人間の内面に迫ったミステリーです。主人公は、職業も立場も違い、物語も多様性がありますが、基本的に普通の人。彼らは出会った人や起こったことなどちょっとしたきっかけで罪を犯したり、人生の歯車が狂ったりしていきます。本作では、原作の世界観を生かし、言葉にならない人間の苦悩まで、丁寧に描きました」
と、出水有三チーフプロデューサー。
第1夜「万灯」。東南アジアでガス油田開発に携わる商社マンの伊丹(西島)は、土地の買収が地元民の反対で頓挫していた。しかし、長老たちから反対派のリーダーを殺せば、買収に応じると持ちかけられる。
第2夜「夜警」。警察官の柳岡(安田)は、部下の川藤が刃傷ざたになった夫婦ゲンカに巻き込まれ殉職。夫から身を挺して妻を守った川藤の行動は世間から称賛されたが、柳岡は、自己犠牲の精神がない川藤の死に違和感を覚える。
最終夜「満願」。弁護士の藤井(高良)は、学生時代に世話になった下宿の女将が被告の殺人事件の弁護を担当することになった。夫の借金の取り立てにやってきた貸金業者を殺害した女将の真意とは─。
撮影のこだわりは、原作の世界観を生かすためのロケ地探し。
「“万灯”は海外ですが、“夜警”“満願”は日本だけど日本ではないような、3作とも現代だけど現代ではないような普遍的な場所選びに苦心しました」
と、制作を手がけた日テレアックスオンの仲野尚之プロデューサー。
演出は萩生田宏治、榊英雄、熊切和嘉と映画監督が担当。通常のドラマとは趣の違う作品に西島、安田、高良は、監督らと密にディスカッションしながら役作りに臨んだという。
「みなさん共通しているのは場所や町に溶け込んで、そこからキャラクターを作り上げていくというスタイル。さらに、衣装をまとうことで、どんどん掘り下げていました。時間のないなかでも、じっくりと役に向き合っていただいたのを感じました」(仲野P)
タイトなスケジュールでの撮影だったが、どの作品も印象的なエピソードが。
「“万灯”はコンビニなどがない不便な場所で、3時間ほど降り続くスコールで撮影が中断されることも。そうした状況でも西島さんは、未開の地に向かう商社マンの伊丹そのものだったので、われわれも、どうベストを尽くすか? 一丸となって全力を注ぎました。
原作の世界観を表現するのに最適な、奇跡のような雨が降った“夜警”のラストシーンには注目してください! 柳岡は、感情を表に出さずに警察組織の中で生きることを選んだ男。出水CPは安田さんに“(白でもなく黒でもなく)グレーの感情表現”をリクエストしたのですが、安田さんはわれわれの想像以上の演技を見せてくださいました。
“満願”の高良さんは弁護士を演じるにあたり、実際に裁判を傍聴。そして苦学生の役作りで、自主的に減量したようです。撮影時にはゲッソリ頬がこけていて驚きました。空き時間にはロケ場所の町を歩いて、溶け込もうとしていたのが印象的でした」(仲野P)
予定調和やハッピーエンドもない、余韻の残る結末ばかり。
「わかりにくいラストにしたわけではないのですが、場所も美術も役者さんの感情もそれぞれ丁寧に描いた結果です。何度、見直しても新しい発見がある作品になっています」(仲野P)
「私たちの日常の中にも、ちょっとした間違いで境遇や人生の歯車が狂い始めることがあるのだということを擬似体験していただければと思います」(出水CP)
<作品情報>
ミステリースペシャル『満願満願』
NHK総合 8月14日(火)、15日(水)、16日(木)
3夜連続放送 いずれも夜10時〜