SNS発キャラは縛りがないので自由
一方、ハローキティやリラックマ、ポケットモンスターやジブリなど、日本にはキャラクターが溢れている中で、SNS発キャラというのはどう位置付けられる存在なのだろうか。長年にわたり多くのキャラクターを見てきた、主婦と生活社の絵本雑誌『ね〜ね〜』の殿塚郁夫編集長に話を聞いた。
「キャラクターは成り立ちがさまざまです。ディズニーやジブリなど、アニメや漫画などの原作があるものがキャラクター商品の基本で、一番多い。一方でキャラクターメーカーのサンリオやサンエックスでは、もともと商品に使用するためにオリジナルキャラクターが作られているため、設定はあっても原作がありません。こういったキャラの成り立ちは日本ならではで、欧米ではまず見られない。かつて、70年代に生まれたハローキティを初めて海外に持って行った時に、“これは何? 有名な絵本なの?”と聞かれ、原作がないことに驚かれたといいます」
時代が流れて今、SNSというツールができたことで、個人的に描いた漫画やキャラクターをネット上で披露できるようになった。
「従来は漫画家になるには出版社に自分から売り込まなくてはならないし、作品は編集部から依頼があって描くもので、発表のハードルが高かった。今、作者はキャラクターを好きなように描いてSNSにアップできるし、縛りもないので自由だと思います。作者も描き始めた時は“大儲けしよう”なんて考えていないはず。一方で、キャラクターメーカーだったら市場調査したり、営業の意見を聞いたりして、キャラクターを戦略的に作っていくという部分が違いますね」
ツイッターで寄せられたファンの声を作品に反映
また、ロフトの小倉氏は、キャラクターの作者=クリエイターが身近であることが今の時代の特徴だと話す。
「作者は直接作品を届けることができて、受け手とつながりを感じられるし、ファンは自分がそのプロジェクトに参加しているような感覚があるのではないでしょうか。作品のプロジェクトに参加して、スマホで見ていた二次元のキャラがグッズになって具現化したものを楽しむ。育っていく歴史が見られる喜びがあると思います」
実際、前出の『タヌキとキツネ』や『ネコノヒー』も、ツイッターで寄せられたファンの声を作品に反映させているという。
『タヌキとキツネ』の編集担当者は、
「参考にしたという点では、小さいお子さんのいる親御さんのツイートを偶然拝見し、書籍作りに参考にさせていただいたことがありました。その方は『タヌキとキツネ』の全部のページに自分でフリガナをふって、ご自身のお子さんが読めるようにしてくださったんです。それを知って、だったらはじめからフリガナをふっておこう! とアタモト先生と相談して2巻から全部にフリガナをふりました」
意外にも子どもからの人気が高いことがわかり、フリガナをふったおかげか、小学校低学年の子どもからのファンレターも増えたという。
『ネコノヒー』の漫画では、失敗ばかりのネコノヒーが成功したときに「success!」の文字が踊っておかしみを誘うのだが、作者のキューライス氏は、「success!は読者の皆さまからの“可哀想だからなんとかしてほしい!”という声から生まれた救済措置でした」と裏側を明かしてくれた。