エレベーターでいきなりキスされて

 日曜日のデートを終えた里美さんから、「ご相談したいことがある」と電話がかかってきました。昨日からのウキウキメールとは一転、里美さんの電話の声は、なんだか沈んでいました。

「1軒目は、居酒屋さんに行ったんですね。で、すごく楽しく盛り上がって、『2軒目にカラオケに行こう』となったんです。手をつないで、カラオケ屋さんに向かいました」

 そこまでは、とても幸せな気分だったと言うのです。

「ビルの5階だったので、エレベーターに乗ったんですね。そうしたら、いきなり抱きしめられてキスされたんです」

 あまりにも突然のことに身体がこわばってしましい、とっさに吉田さんを力任せに突き放してしまったと言うのです。

「“えっ、なんで?”って、顔をされました。それで、2人の間に気まずい空気が流れて、結局カラオケ屋さんには行かずに、そのままエレベーターを降りて、帰りの電車に乗りました」

 家に着くと、吉田さんから電話があったと言います。

「今夜は突然に失礼なことをしてしまって、ごめんなさい。でも、僕は、里美さんのことがすごく好きだし、里美さんも同じテンションで盛り上がってくれているのかと思っていた」

 里美さんは、吉田さんを好きになりかけていました。

 でも、お見合いの翌日の初めてのデートで、いきなりキスをしてくるのは、あまりにも軽率な行動だと感じてしまった。

 好きになったらその人と一緒にいたい。触れたいと思うのは自然なことです。だから手をつなぐ。そこから段階を追っていくわけですが、キスをするとその先に男女の関係になることを連想させます。

「吉田さんが、もしも私のことを大切に思っているのなら、お見合いを含めて会うのがまだ2回目なのだから、“キスしたい”と思っても、理性でそれを抑えられなかったのかなって。こういうタイプの男性って、誰にでもこういうことをしている気がしたんですね」