たとえば、「自分はしないくせに前戯を要求」「セックスは減ってる割に、隠れてするマスターベーションは頻繁」「カレーを作ったと張り切る割に、米炊いてねぇし」「何度言っても雑巾と布巾の違いがわからない」「ゆですぎたそうめんを見て、お前みたいだと無神経発言」「お茶をこぼしても、体より指輪の箱を心配する」「飲み代も食費も賃貸更新料も立て替えさせられる」……。
浮気相手との恋は盲目だが、彼氏との日常については逆に開眼、不満が一気に噴出していく。面白いなぁ、女って。イヤなところがどんどん視界に入ってきちゃうんだね、比べる対象があると。そのリアリティが生々しいったらありゃしない。
タブーを楽しむ。最終的には女不要論へ
「男を金で買う」「未成年に手を出す」。要するに、タブーだ。ゴールデン・プライム枠で決して踏み込まない毒気を深夜枠が担う。
アラートを鳴らしてはいるが、実はすごい好きだ。これらを「やるな」とは決して言わない。入口やテーマがタブーであっても、女が自由になるために、いわば名誉の負傷みたいな描き方は大歓迎だ。
そこで、もうひとつ。『ポルノグラファー』(フジテレビ系・毎週水曜25時25分)は、いわゆるイケメンBLドラマだ。
男子大学生(猪塚健太)が自転車で事故を起こしてしまう。相手は官能小説家(竹財輝之助)で、腕をケガさせてしまう。貧乏学生の猪塚は治療費や示談金を払えない代わりに、口述筆記のバイトを引き受けることに。このイケメンふたりが官能小説を通して、恋に(性愛に)目覚めていくっつう物語。
BLはタブーでもなんでもないんだが、とうとうここまでド直球のBLがドラマになったかと思うと感慨深い。恋愛ドラマに女なんて不要というのが、むしろ清々(すがすが)しい。
女が出てこないのでオンナアラート鳴らしようがないんだけど、これはこれで眼福というか、満足。ぜひ、深夜枠の生々しい恋愛モノを見てほしい。久々に「むふふ」感を味わえるよ。
吉田潮(よしだ・うしお)◎コラムニスト 1972年生まれ、千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。テレビ『新・フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターも務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)ほか多数。新刊『産まないことは「逃げ」ですか?』に登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。公式サイト『吉田潮.com』http://yoshida-ushio.com/