お見合いは、結婚を前提にした出会い。生涯をともにする伴侶を探すのですから、そこにはマナーやルールがあります。婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合い現場に携わる筆者が、目の当たりにした男女の婚活事情を、様々なテーマ別に考えてゆく連載。今回は、『ご縁につながるお見合い、つながらないお見合い』です。
遅刻をしても我が道を行く
その日は、ウィークデー、会社が終わってからのお見合いでした。お見合い場所のホテルは休日のような混雑もなく、ゆったりとした時間が流れていました。
19時からだったので、18時45分には、男性会員の安藤さん(38歳、仮名)とともに、1階のティーラウンジ入口前で、お相手の吉田さん(35歳、仮名)が到着するのを待っていました。すると、吉田さんの仲人さんから電話がかかってきました。
「申し訳ありません。会社を定時に出ることができず、10分ほど遅れて到着するようです。安藤様によろしくお伝えください」
隣にいた安藤さんにそのことを伝え、2人でそのまま世間話をしながら待っていました。
ところが、19時10分になったのですが、吉田さんは現れませんでした。15分が過ぎ、20分が過ぎ、30分が過ぎた頃、入口から背筋をピンと伸ばして、悠々とこちらに向かって歩いてくる女性がいました。それがお見合い相手の吉田さんでした。
遅刻してきた人というのは、小走りだったり顔に汗をにじませていたり、どこか慌てている様子が見受けられるものですが、そんな様子はありませんでした。
私たちの前に来ると、彼女はゆっくり会釈をして言いました。
「こんばんは、吉田です」
30分近く遅刻してきたのに平然としている様子に、私はちょっと違和感を覚えました。
2人をティーラウンジに送り出し、しばらく遠目で見ていたのですが、吉田さんは女性政治家のような威風堂々とした態度で着席をしました。
その日、お見合いを終えた安藤さんから、電話連絡がきました。