介護問題や相続問題など、家族が抱える問題はさまざまだが、それも時代によって変わってくるのだという。
「今回は在宅医療について描きましたが、昔は訪問医という職業にスポットライトが当たることなんて少なかった。でも最近は自宅のある熱海でも2軒ありますし、少しずつ浸透しているんだなと。私も今のうちにそこの先生と仲よくしておけば、最期はうまいこと安楽死させてくれるかな(笑)。“脳梗塞になって動けなくなったら、わかんないように尊厳死させてね”って頼みたいですよ。
若い人や、何としても生きたい人には関係ない話でしょうが、死にたくても死ねない老人はいっぱいいます。十分に生きてきた、それでも生きなきゃいけない、生かさなきゃいけないというのは、周りも大変ですから。
今回、長女の長山藍子さんが演じる弥生は、これまで一生懸命に可愛がってきた孫が、高校生になって“おばあちゃんの顔も見たくない”と言われショックを受ける。それで家を建て替えて、お年寄りが集まる家を作るんです。私はひとりが好きだから、そういうのは嫌いだけど、人と集まることが認知症予防にもいいらしくて……。そんなことも全部“渡鬼”には描けます」
'90年のスタートから、510回も続いたドラマは前代未聞のロングランとなる。
「プロデューサーの石井ふく子さんがギネス世界記録(最多舞台演出本数、世界最高齢の現役テレビプロデューサー)をとられて、“もちろん、あなたもギネスよ”と言われたけど、私はそんなのイヤだと言ったんです。だって、『流しそうめん最長記録』とかと並べられるのはイヤですもの(笑)。
“渡鬼”は主人が亡くなった翌年から始まったんですが、長い間書き続けられて物書き人生の中でもいちばん幸せな仕事だったと思います」