それでも貴乃花の話題は視聴率が取れた。
なんといっても大相撲は高齢者も観ている国民的なスポーツである。その中でも別格のスターである貴乃花であるから、日頃あまり相撲に関心がない主婦層も、たとえポジティブな話題ではなくてもニュースやワイドショーを観てしまう。
「どうしちゃったの貴乃花。お兄ちゃんとあんなに仲良かったのにね……」。視聴者はそんなことを言いつつ整体師の話などを、興味を持って観ていたのである。
引退後の2005年に父である二子山親方が死去。このときに遺産相続を巡って、兄を「花田勝氏」と突き放す言動がまた波紋を呼んだのだった。
私も日本テレビ放送網在籍時、貴乃花に何回か番組のゲストで出演してもらったことがあるが、打ち合わせや出演時の限りにおいては人当たりが良い常識人であるように見受けられた。
時折見せる眼光の鋭さには流石に大横綱の迫力を感じたが、愚直で不器用と言われる性格が騒動を引き寄せるという側面もあるのだろう。
何かコトを起こせばメディアは飛びつき、視聴率を取る
2010年に一門を離脱しての理事選出馬から今日に至るまでの相撲協会との軋轢についてはここでは深く触れないが、貴乃花が何かコトを起こせばメディアはやはり飛びつく。そして取り上げるテレビ番組も確実に視聴率を取る。
「これは協会が悪いな」
「貴乃花ももう少し柔軟に考えたほうがいいのに」
「あの相撲記者は協会寄りだよね」
「八角理事長も保志って四股名の頃は初々しかったんだけど」
「大乃国もツライ立場なんだろう」
相撲協会側の登場人物もかつての横綱なので“役者”には事欠かない。